神呪寺
【かんのうじ】

西宮市甲山町にある寺。真言宗御室派。摩尼山宝珠院と号す。本尊は如意輪観世音菩薩。「元亨釈書」に,天長5年淳和天皇の寵姫が霊夢をみてこの地に隠遁して如意尼を名乗り,空海を請じて如意輪法を修し,如意輪観音を本尊として同8年に本堂を建立したのに始まるという。「帝王編年記」は天長4年を開山とし,空海が本尊秘密神呪を表したので神呪寺と名付けたといい,承元4年には奥院に阿弥陀三尊と四天王像を安置した。当地は交通の要衝にのぞむ位置にあったため,南北朝期以降は正平6年9月に摂津守護赤松則祐の軍勢が神呪寺にこもり(後藤文書),翌年にも則祐は3,000余騎を率いて甲山のふもとに向かい戦っている(太平記)など,しばしば合戦場となった。神呪寺も城郭化され,神呪寺城ともよばれた。永正16年にも阿波国から上洛を企てた細川澄元の軍勢が,神呪寺・鷲林寺に陣取って激戦を展開している(細川両家記/群書20)。寛政3年の本末帳には仁和寺末で「武庫山神呪寺」と見える(本末帳集成)。本尊の木造如意輪観音座像・同聖観音立像はともに平安後期作,同不動明王座像・同弘法大師座像はともに鎌倉期の作で,いずれも国重文。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7157562 |