国中
【くんなか】

奈良盆地の中心部を示す呼称だが，いつ頃から使用され，また具体的にどの範囲を指すかは明らかではない。「やまとは　国のまほろば　たたなづく　青垣　山ごもれる　やまとしうるわし」（古事記景行段）という思国(くにしのび)歌に詠まれる「やまと」を狭義の大和，「国」を奈良盆地と解釈すると，この「大和」は国中の意味に近い。狭義の大和は，磯城(しき)・十市両郡を示すとする説に従えば，国中もそのあたりか。奈良期の造東大寺司次官兼但馬国員外介であった国中公麻呂は，大和国葛下郡国中村の人とあるので（続紀宝亀５年10月己巳），国中の範囲は磯城・十市両郡よりも広かったとも考えられる。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7166748