古瀬
【こせ】

旧国名:大和

曽我川の上流域，巨勢の谷あい地域に位置する。紀州街道や下市街道の起点で，集落は古瀬・川合・水泥(みどろ)の字に分かれる。コセは「山陰の道のあるところ」を示すとする説，西日本各地で川をゴウと呼ぶところから「川の瀬」とする説，峠にあたるところから「越」の転とする説などがある（古代地名語源辞典）。川の瀬に沿う狭小な渓谷を示したものか（御所市史）。水泥には国史跡の水泥古墳がある。地元では石棺がある古墳を入鹿の墓，北方にある石棺のない古墳を塚穴古墳と呼んでいる。川合に八幡神社，高社に式内社巨勢山口神社がある。字若宮の大倉姫神社は「延喜式」神名下に「大倉比売神社一名雲櫛社」とあり，俗にうぐいす宮と呼ばれる。戸毛(とうげ)の同名の神社は洪水で川下に流され，すくい上げて祀るようになったと伝える。浄土真宗本願寺派高松寺の本尊は阿弥陀如来像で南北朝期の優作。ＪＲ吉野口駅の北方に白鳳期の巨勢寺跡がある。巨勢寺塔跡の南の浄土真宗本願寺派正福寺は巨勢寺の子院勝福寺の後身と伝えられ，和州葛上郡古瀬村玉椿山図（巨勢寺伽藍図）を所蔵。ＪＲ吉野口駅北西の山麓の字福田にある阿吽寺も巨勢寺の１坊で，安曇仙人がここで修行したと伝える。平安期に巨勢川が氾濫した時，里人は村を救った阿吽法師に当地に住することを懇請した。これが阿吽寺の起こりという。同寺奥の院の観音は麻疹に霊験ありという。かつて大日如来を祀った金剛寺があった。
【巨勢(古代)】　飛鳥期から見える地名。
【巨勢(中世)】　平安末期から見える地名。
【古瀬村(近世)】　江戸期～明治22年の村名。
【古瀬(近代)】　明治22年～現在の大字名。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7166901