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逝囘岳
【ゆききのおか】


古代の岳名。「万葉集」巻8に丹比真人国人が「明日香河逝囘岳の秋芽子(あきはぎ)は今日降る雨に散りか過ぎなむ」(1557)と歌っている。逝囘岳の読みにほかにユキタムヲカ・ユキミノオカなど諸説ある。題詞に豊浦寺の尼房で宴したときの歌とあり,逝囘岳の意味を明日香川がゆきめぐって流れている丘の意味に解釈すると,高市郡明日香村内にある雷丘を指すものとみなされるが(万葉集事典),同村内の甘橿丘ともみる説もあり(万葉集巻3講義,万葉集大和地理事典),特定できない。雷丘は「万葉集」巻3に柿本人麻呂により「大君は神にしませば天雲の雷の上に廬(いほ)りせるかも」と歌われており,明日香村雷にある標高110mの小丘であるとする説(万葉集注釈,大和地理研究)が有力である。「地名辞書」は現在の明日香村岡の「市往岡」(統紀神亀4年12月丁丑条,姓氏録右京諸蕃下岡連・市往公)に比定する。なお逝囘を遊岡の誤写と考え,高市郡遊部郷にあった丘陵とする説もある。逝囘岳はまた「待つ人のゆきゝの岡も白雪のあすさへふらは跡や絶なむ」(続古今和歌集),「飛鳥川ゆきゝの岡の葛かつらくるしや人にあはぬ恨みは」(新後撰集),「旅人のゆききの岡は名のみして花にとどまる春の木の本」(風雅集)などと歌われている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7170012