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妙法山
【みょうほうざん】


東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町の中央にそびえる山。標高750m。熊野酸性岩からなる。那智の滝の南西に位置する。大宝3年僧蓮寂上人がこの山で,千日の行を重ねた後,心仏不二の冥感をなし遂げ,衆生解脱のため,妙法蓮華経を書写して山頂に埋め,その上に釈迦像を安置したことから妙法山という(色川村誌)。山中には弘仁6年弘法大師の創建と伝える真言宗阿弥陀寺がある。大和の室生寺とともに女人高野として知られた寺で,大雲取越え街道沿いにあることから,女人禁制の高野山の代わりに当寺に参詣する女性も多かったことと思われる。当山は,捨身が行われた所としても知られ,「日本霊異記」にも類話が見える。また,応照上人によって焼身供養が行われた。法華経薬王品にある薬王菩薩の焼身焼臂にならい,身体を諸仏に供養した応照上人は,「妙法山縁起」によれば弘仁年間の人といい,山中にはその火定遺跡が残る。阿弥陀寺奥の院周辺は樒山ともいわれる。死者の霊が,枕飯の炊ける間に手向けられたシキミを携えてこの山にもうで,山門近くの梵鐘,妙法山の一つ鐘を打ち,シキミを落として帰ることから,一帯はシキミに覆われるという。「続風土記」はこれを亡者の熊野参りとしており,現在でも納骨・納髪が行われる。阿弥陀寺境内の展望台は眺望に優れ,眼下には吉野熊野国立公園内の雄大な風景が展開する。南西には本州最南端の潮岬(しおのみさき),串本,大島,南に捕鯨で名高い太地(たいじ)湾,帆船時代熊野灘で最も安全な避難地であった森浦湾,湯川温泉ゆかし潟,南東には勝浦港に紀ノ松島,それに続く那智湾,東に東京と那智勝浦町を結ぶフェリー基地のある宇久井半島や新宮までの海岸線が望まれ紀南観光地で最も展望に恵まれる。古くは妙法山と那智山は2.5kmの古道で結ばれ,徒歩で40分かかったが,現在は妙法スカイラインが通じ,観光バスで15分ほどとなった。南麓には中世からの銅鉱山があったが現在は閉山している。南麓にはパブリックゴルフ場がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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