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秘坂鐘乳穴
【ひめさかかなちあな】


新見市豊永赤馬字本宮にある県内最大規模の鍾乳洞(石灰洞)。総延長は1,600m,高低差は184mに達する。洞窟の伸長方向には2方向があり,洞口から神の池まではS70°E,神の池から最奥部の地底湖までは南に延びている。前者は巨大で空間部が極めて大きく,後者は平均天井高10m,幅は4m内外と狭い。日咩坂鐘乳穴(ひめさかかなちあな)神社の南西方向のドリーネを60mほど下ると洞口に至る。洞口は高さ15m,幅7m。洞口付近の河床は人頭大の岩が多く歩きにくい。梅雨にはまれに水流が出現する。洞口から神の池までは約5°の勾配で平坦,高低差は-55m。また洞口から300mの地点に星穴,500mでは大穴と呼ぶ巨大な開口部がある。水流に乏しく外気に近い温度・湿度であるため,二次生成物の発達は悪くフローストーン・つらら石・石筍・カーテンなどが多少見られるが,生長は停止,崩壊しつつある。従来この洞窟は神の池までの700mで,その先は進入不可能とされてきた。柴田晃を中心とするグループが,先年渇水時に神の池を水中突破したところ,1,000mに達する人跡未踏の美しい新洞を発見した。狭い曲がりくねったU字管状の空間を越えると滑り台(通称)に至る。無水の滝(-20m)であり,さらにいくつかの滝を通り過ぎると最奥部に水深-35mの大地底湖が出現した。洞内の状況は神の池が常時水没しているため,温度・湿度が一定に保たれ二次生成物の発達もよい。また二次生成物が水流により再浸食されている箇所もあり,現在鍾乳洞としては成長期にあると考えられる。洞窟の発見の歴史は古く,神の住む場所としてあがめられてきた。日咩坂鐘乳穴神社は,「延喜式」神名帳にも記された古い神社で,洞窟を神体とする。記録によると,洞内から石鍾乳(いしのちち)という薬種を産出したという。昭和32年阿哲台の一部として県天然記念物となる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7186188