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犬ケ森の穴
【いぬがもりのあな】


犬ケ森ポノール・佐山の吸込穴・大正洞の吸込穴ともいう。美祢(みね)郡美東(みとう)町赤の佐山ポリエ南西端の下鳴(しもなる)地区に位置する洞窟。奥秋吉台の真名(まな)ケ岳北麓に開口する。国天然記念物の大正洞の東南方約200mにあって,標高160mから深さ約40mの竪穴に続く吸込型の流入石灰洞。洞窟の測線延長は約800m。豪雨時には溢流して付近一帯を水浸しにすることもあり,たびたび大半部が水没するため,洞内はボアーパッセイジと呼ばれる飽和水帯管が,東10°南とこれに直交する2方向で交錯し発達している。急傾斜の節理に沿って形成され,天井や壁に母岩の突起が認められるフレアティクペンダントや,隣同士が接近したり結合して生じる柱石や天然橋が観察できる。渇水時には標高120m付近まで水位が下るが,二次生成物の装飾はなく,大正洞の「地獄」「奈落」に似ているので,これらとほぼ同一の水準にある一連の地下水系にあると考えられる。近くには大正洞や姥ケ穴(うばがあな)など多くの洞穴が散在し,犬ケ森の穴より西の盲谷の部分は,大小の石灰岩塊が累積していることから,ここに発達していた洞窟が崩落した跡と想定される。佐山ポリエ北端の景清穴から流出した三角田(みすまだ)川(別名悪水(あくすい)川)は,増水時のみではあるが犬ケ森の穴に滝状となって落下し吸い込まれる。犬ケ森の穴に吸い込まれた地下水は,芝尾ポリエ東端の河原谷に開口する「鹿の井出(かのいで)の穴」を中心に湧出し,厚東(ことう)川の支流青景(あおかげ)川となる。犬ケ森の穴の開口は約2万3,000年前と推定され,それより前にポリエ内に堆積した赤郷面(標高180~190m)を開析して段丘をつくり,佐山面(標高170~175m)を形成したと考えられる。この頃,三角田川と三本木川との間の谷中分水嶺が宮の馬場に生まれ,ポリエは乾性化した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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