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内場池
【ないばいけ】


香東川水系内場川が香東川に合流する地点から約1km上流の香川郡塩江町安原上東に位置する内場ダムの貯水池。内場ダムは花崗岩を基盤とした堤高50m,堤長157mの重力式コンクリートダムで,治水・灌漑・上水道を目的とする多目的ダム。当池は周囲6,500m,満水面積48.6ha,貯水量720万m(^3)(灌漑用容量575万m(^3),上水道用容量145万m(^3),受益面積3,376ha)は県下では満濃池,府中ダムに次いで第3位である。灌漑面積は香川郡の大部分,綾歌・木田両郡および高松市の一部を含む4,725haにも達し,これは県下第1位の広さを誇る。上水道用水は高松市に供給される。香東川上流域は風化されやすい和泉層群からなり,かつ急流河川でもあるため,住民は豪雨のたびに洪水の被害を受けてきた。また,流域の年間平均雨量は1,300mm程度であり,山間部の流路延長が短く水源の涵養ができないため,水量は極めて少なく,中流付近で伏流してしまう現状にある。このため下流の水田灌漑は数多くの溜池に依存し降雨を待って灌漑するため,天候に支配されるところが多い。さらに,長年高松市は上水道用水の不足に悩まされ,工業用水などとともに水源を確保しなければ市の発展は望めない状態であった。このため下流域の住民は多年香東川の改良を熱望してやまなかった。古くは,安原村村会の会議録によると,明治末期から大正のはじめにかけて香川郡耕地整理基本計画により,内場池を造る意見があったが,大正元年の村会で人命・財産の危険と,灌漑用水の低温による稲作への害,あるいは工費100万円の多額に対する見返りはないなどを理由に内場池築造反対の決議をした。以後そのままになっていたが,昭和になってその必要性が再び論ぜられ,機運が急に高まり,昭和7年内場池期成同盟会発会式が行われ,昭和13年工事が始まった。しかし,第2次大戦が激しくなった昭和19年工事を中断,戦後同24年工事を再開し,同28年総工費7億5,000万円を費やし完成した。香東川の洪水の被害,高松平野における日照りによる稲作被害や高松市の水不足は,当池の完成によりほぼ解消されたといえる。水面にうつる阿讃の山々の変化に富んだ景観には,水没した87戸の古里の面影もない。堰堤西側の小高い丘の上には,池の守護神竜神社が祀られている。また,堰堤西端に池に面して築造の功労者中村和七翁の銅像がたつ。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7199232