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屋宜湊干瀬ノ御イビ
【やぎみなとひしのおいび】


中城(なかぐすく)村屋宜にある拝所。屋宜と北隣の添石との堺を流れるヤージガーラ(屋宜川)の河口近くの干瀬にある。方言ではヤージンナトヌイビガナシーといい,現在は単にイビガナシーともいう。またドゥーグーヌカミ(竜宮の神)とも呼ばれる。一帯は港であったと推測され,「由来記」に屋宜湊とあり,現在でもヤージンナト(屋宜港)と呼ばれる。現在のイビガナシーは,第2次大戦後に建てられたもので,二抱えもある2つの琉球石灰岩をセメントで固定しており,香炉を前に固定し,潮の干満や風波にも耐えられるように堅固に築かれている。満潮時には海に没し,干潮時には現われる隠顕石で,向かって左のイビをヲーイビ(雄イビ),右をミーイビ(雌イビ)と称している。ミーイビの位置は戦前から同じだが,戦前のヲーイビは現在地の北200mの海中にあったという。かつてのイビガナシーは,現在のものより大きく満潮のときも海面に現われていたが,戦争で破壊された。「由来記」に屋宜湊干瀬ノ御イベと見え,神名南風ノアアビノ御イベが南側のミーイビ,西ノアアビノ御イベが北側のヲーイビに当たる。イビガナシーは旧正月の初御願,旧暦3月3日,旧暦5・6月のウマチー,旧暦7月17日,旧暦12月24日に拝んでいる。旧暦3月3日だけは,屋宜ノロが拝んだ。旧暦7月17日は,旗スガシと称し,旗を先頭に行列をつくってイビガナシーを拝し,集落内を練り歩き,アシビナー(遊び庭)で獅子舞を演じて悪霊払いを行っていた。ドゥーグーヌカミの名称が示すように,海の彼方のニライ・カナイに通ずる神で,人々に豊饒をもたらす神として信仰されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7241927