松之沢村(近世)

　江戸期～明治22年の村名。群馬郡のうち。はじめ高崎藩領，慶長６年幕府領，承応３年安中【あんなか】藩領，寛文２年旗本保科氏領，延宝元年幕府領，元禄11年旗本保科氏領，慶応３年からは前橋藩領。検地は，承応３年安中藩が実施した。村高は，「寛文郷帳」49石余うち田方10石余・畑方39石余，「元禄郷帳」「天保郷帳」「旧高旧領」ともに62石余。村役人は名主１，組頭２，百姓代２。天保６年名主粂右衛門，宝暦10年名主八左衛門。鎮守は榛名社で，祭神は埴山毘売神，住民は朝夕榛名の霊峰を仰ぎ，崇敬の念から榛名神社の祭神を現在地に祀り，榛名社と称し信仰した。明治期に至り火産霊命を合祀し，榛名若御子神社と称すると伝えている（箕郷町史）。寺は真言宗清水山松之沢寺があり，白川の滝沢寺四世英潭が戦国末期長野業政の命を受け創設したという。明治４年前橋県，群馬県を経て，同６年熊谷県，同９年群馬県，同11年群馬県西群馬郡に所属。同13年榛名山麓に入会権を持つ80数か村農民の秣場騒動が起きたが，これは明治６年地租改正の際，政府が部分林法を定め松之沢村が部分木借用申請をして許可されたことが原因である。他村民は入会権を主張し，数千人が押し寄せる暴動となったが２年後には鎮まり，結局部分木48haは当村の所有となった。儒者佐々木愚山は，明治初年松沢寺に住んで庶民の教育にあたった。同14年から５年間日本政府の招きで来日したオランダ人水理工師デレーケは，榛名白川の水源地帯である黒岩下の渓流に内務省の指導で砂防工事三面石積みを実施し，栗の木川上流にその跡がみられる（箕輪町史）。同22年箕輪村の大字となる。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典(旧地名編)」 JLogosID : 7284613