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鹿嶋(古代)


奈良中期から見える港名・郷名「鹿嶋」は平城宮跡出土の木簡の表記「香嶋」(万葉集)・「加嶋」(延喜式・和名抄)とも書く越中国能登郡のうち港名は,天平20年春の出挙の督励のために能登半島を巡行した越中守大伴家持の歌の題詞に「能登郡の香嶋津より発船して,熊来【くまき】村を指して往く時」と見えるのが初見(万葉集,巻17‐4026)「延喜式」では,「加嶋津」が能登国の国津として記載され,加嶋津から越前国の敦賀【つるが】津に至る船賃・運漕功の規定が見える郷名は,平城宮跡から出土した天平宝字3年4月□3日の調熬海鼠の貢進付札に,「能登国能登郡鹿嶋郷戸主若倭部息嶋」とあるのが初見(平木簡3)「和名抄」では,能登郡九郷の1つとして「加嶋郷」が現れる訓は「加之万」港名・郷名は,郡名に継承されているが,荘・郷・保名や村名としては遺称地がない七尾湾北湾北岸の中世にいう諸橋【もろはし】郷,現在の鳳至【ふげし】郡穴水町東部の甲【かぶと】・阿曽良【あそら】・沖波【おきなみ】・前波【まえなみ】・宇加川【うかがわ】・古君【ふるきみ】付近にあて,甲港を加嶋津(香嶋津)に比定する説(日本地理志料)もあるが,妥当性が薄く,七尾湾南湾の南岸,いまの七尾市の中心市街区の,特に西半部の御祓【みそぎ】地区を郷域の中心とし,御祓川を挾んで東の八田【やた】郷と並行していたとする説(郷土辞彙)が妥当であり,加嶋津(香嶋津)も,当然現七尾港の一部に相当すると見なすべきである




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典(旧地名編)」
JLogosID : 7324058