多鯰ケ池
【たねがいけ】

鳥取市と岩美郡福部村にまたがる池。東西930m・南北480m，湖岸線3.38km，面積約2.4km(^2)。鳥取砂丘の南方に位置し，一般の潟湖とは異った性質をもち，第三紀層の浸食谷を砂丘がふさいだ堰止湖である（砂丘の生いたち）。２～３月の増水期と７～８月の減水期とでは１～２mの水位変化があり，最大深度は17.3mと中国地方第１位で，透明度は３～3.5mと湖山池・東郷池に比べて高い。注入する河川も流出する河川もなく，湖面は海面より16m高い。池の東には小島と呼ばれる島があり，また中央部には礒の御前(ごぜ)島・沖の御前島の２つの暗礁があり，減水期には水面上に姿を現わす。池には悲しい伝説もある。昔，お種という美しい女中がいた。冬の夜，誰かが「何か甘い物が食べたい」というと，どこからかおいしい柿を取ってきて食べさせる。不思議に思った若衆がある夜あとをつけると，お種はこの池に来て，蛇に身を変え池の中にある島の柿の木に登った。若衆は驚いて逃げ帰ったが，本当の姿を見られたお種は，そのまま池に沈み，再び姿を現さなかったという。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7605626