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長門峡
【ちょうもんきょう】


阿武(あぶ)郡阿東(あとう)町から同郡川上村にまたがる阿武川中流の峡谷。長門峡県立自然公園の主要部をなし,国名勝に指定されている。長門峡の範囲は,広義には阿武川本流の阿東町の御堂原より川上村の渦ケ原にかけての峡谷と,これに注ぐ支流の生雲(いくも)川・蔵目喜(ぞうめき)川・佐々並川などの峡谷を含めた広い区域を指すが,一般には阿武川本流と生雲川の峡谷(生雲渓)をいう。国名勝指定の範囲は,阿武川本流の出合淵より竜宮淵までと江舟川合流点付近より蔵目喜川合流点付近まで,および佐々並川の川上村の大ぬたより同村奥山までの3か所で,総面積は33.5km(^2)。明治末年山口高商英語教師エドワード・ガントレットにより,その美しさが内外に紹介された。萩市出身の日本画家であり林学・地質学の専門家でもあった高島北海も,大正末期から昭和初期にかけて紹介と観光開発に努めた。彼は峡谷に長門峡と命名し,天下の奇勝を安全に探勝できるように遊歩道を建設,案内板を設置した。JR長門峡駅から国道9号を横切ると阿武川本流と篠目川の合流点,丁字川出合淵がある。それを右手に見て進むと桜橋・千瀑洞口があり,馬ノ瀬で大きく屈曲して榧が淵に達する。榧が淵から舟入までは,白い岩と清流・樹木,背後の山峰が調和した渓谷美を見せ,長門峡景勝の中心をなしている。さらに,大谷淵・獺淵・広滑と続き,渓の中間点の鈴が茶屋に達する。佳景淵・和留瀬を過ぎると渓谷をまたぐ真紅の紅葉橋が見える。この橋を渡ると生雲峡を探勝する遊歩道がある。橋を渡らずそのまま西へ進むと急流が岩間を流れ下る断魚瀑がある。白糸の滝を過ぎると,竜宮城と安徳天皇・平宗盛供養の伝説を秘めた竜宮淵に到着する。ここまでが3.3kmの代表的な探勝コースである。長門峡は,津和野(島根県)付近の火山噴出によりできた旧徳佐湖を,南西方向から谷頭浸食してきた阿武川がこれを流域とし,下刻が進んだためできたと考えられている。渓谷の地質は,中生代白亜紀の阿武層群で流紋岩および安山岩質凝灰岩・凝灰角礫岩・溶岩などの火山岩類・火山砕屑岩類である。舟入・大谷淵付近を境に上流側は阿武層群の篠目累層と呼ばれ,青灰白色の岩石が多いが,下流側はそれより若い舞谷累層の石英安山岩質火山岩で,河床が黒っぽく見え,一部にはさらに若い江舟累層の溶岩が層状構造を見せている。長門耶馬渓と呼ばれる秀景に,中原中也・古屋酔紅・氏原大作などの文人が訪れ,詩碑・句碑を残している。10月中旬には紅葉祭があり,県内外からの観光客が多く,近年ではリンゴ狩り,ナシ狩りと結んだ回遊観光が盛んで,年間40万人が訪れる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7606321