伊予見峠
【いよみとうげ】

三豊郡山本町神田の北立石と,仲多度郡仲南(ちゆうなん)町佐文との境にある峠。標高150m。現在は国道377号の路線とほぼ同じ。かつては金毘羅街道の1つ伊予・土佐街道中の峠で,金刀比羅宮(金毘羅大権現)大門から1里に当たり,正面に「こんぴら大門より一里 弘化四未年」と刻まれた,高さ約1.5mの石の道標が頂上付近に残る。道標の左横には「世話人 松山城下湊町二丁目 米尾又三(以下略)」の字が見え,伊予の人々の往来がかなりあったことがうかがえる。伊予方面からは伊予見峠を過ぎ,最後の難所の牛屋口峠を越えると「こんぴらさん」にたどり着く。帰路,当峠の下りにかかる谷間はるか南に,四国山地の赤石山系の伊予の山々が見えてくる。地名の起こりもこれに由来するか。明治36年に現在の国道377号の前身,県道琴平豊浜線が開通して,かつての街道に沿った旅館・うどん屋・茶屋などはまったくさびれた。峠道には何体かの地蔵が置かれたようで,現在4体の同形の地蔵が国道沿いに移されている。伊予見峠に続く佐文寄りの小さな峠を地蔵峠,あるいは蔵峠という。峠のある山地は高瀬町麻から仲南町へ続く洪積台地性の山で,付近は明治年間からタケノコの産地となり,みごとな竹林が見られる。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7606610 |