演説・演舌
【えんぜつ】

enzetu
【江戸時代】公衆の前、議会などで自分の主義主張などをのべること。[中国語]演説、講演。speech, address.
【語源解説】
仏教関係用語。釈迦の説教、例えば、『法華(花)経』に〈正法ヲ演説ス〉とみえる。しかし近代の場合は江戸期にオランダ語、rede(revoerig. 英語speech)の翻訳として用いられたところからである。なお、江戸期には1)説明、解説の意。2)武家社会の用語。裁判用語として訴訟文書の一つに〈演説書〉がある。3)仏典にみえる〈演説〉。訳語の演説はこれらを勘案して定めたと思われる。さらに、明治期の演説はこの伝統に、新しくはいってきたヨーロッパの〈雄弁術〉にならって設定された〈演説〉術によって確立した。
【用例文】
○彼は前もって勘弁なしによく演説〔rede〕をなした(ドゥーフ・ハルマ)○演説しがたきは詩歌の理なるべし(てには網引綱)○石谷因幡守殿 左内〔橋本左内〕之罪状御演説之上(訴訟文書)○演舌書、演説(福沢諭吉)○政談講学ヲ目的トシテ公衆ヲ集メ講談演説ノ席ヲ開ク(政府通達、明治十二年五月九日)○私共が予備門へ入って間もない頃から演説といふ事が世間にチラホラ始まる様になった(高田早苗)○演説ハ前年〔明治13年〕ヨリシテ盛ニ都鄙ノ間ニ行ハレ(東京日日新聞)○公開演説は一種の流行となった(馬場辰猪)○呉(ゴル)敦(ドン)太守の功労を称して其の寿を祈るむねの簡潔なる一場の演説をなし(森田思軒)○それじゃァまた演説(はじめ)やう/君も知ってる通り、スピイチ演説なんざァうまし(坪内逍遥)○滔(とう)々(とう)よどみなく演舌(おしゃべり)すれども(二葉亭四迷)○〔議員どの〕演説(ゑんぜつ)上手に人をも感動さするよし(樋口一葉)○どうだ最前(さっき)の演説はうまかったらう/それで演舌が出来ないのは不思議だ(漱石)○鴎外先生も出席せられしが演舌中窃(ひそか)に席を立ち(永井荷風)
【補説】
〈演説・演舌〉は大正期まで用いられ、やがて前者に統一された。福沢諭吉が英語のspeechを演説と訳したと自身語っているが自伝、必ずしも真を語らない。諭吉の活用した蘭和辞典に訳語の〈演説〉がある。

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8537234 |




