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膏薬
【こうやく】


k^{o}yaku

【近代】あぶらでねった、塗(ぬ)ったり、貼(は)ったりする薬。傷口や患部の治療に用いる。[中国語]膏薬。ointment.

【語源解説】
〈膏〉は高の部分が音コウ。月は肉を示す。あぶらをいう。脂と同じく、かたまったあぶら(油は液体状のもの)。また人間の心臓の下部の微脂をさす。なかなか名医の治療の手のとどかぬところでもあり、その点、膏薬は第一級の薬といえたであろう。

【用例文】
○これは鎌倉の膏薬煉でござる/これほどよい膏薬はあるまひ(狂言)○羊(ヨウ)蹄(テイ)膏(カウ)、膏薬(カウヤク)、竺(ヂク)伝膏(デンカウ)mini{此ノ膏薬ノ方ハ天竺〔インド〕自(ヨリ)伝ヘ来ル故ニ尓(シ)カ云フ}(下学集)○Cv{o}yacu. カゥヤク 腫(は)れ物、潰瘍(かいよう)などにはりつける軟膏、硬膏のごとき薬/ウチマタガゥヤク=両側へくっつく膏薬。すなわち、ある時は甲の側になり、ある時は乙の側になるような定見のない人のことをいう(日葡辞書)○膏薬(カウヤク) 息(イキ)、張(ハリ)、練物(ネリモノ)、茄子(ナスビ)、南蛮(ナンバン)、煖(アタヽム)、吸(スフ)(類船集)○慶(ケイ){しめすみぎ)(ユウ)ノ太(タ)乙(イチ)膏(カウ)、慶(ケイ)雲(ウン)意(イ)徳(トク)ノ万応膏(マンオウカウ)、同茄子(ナスビ)膏薬(ガウヤク)(毛吹草)○うちまたがうやく(世話焼草)○膏薬(カウヤク)(書言字考)○彼方(あっち)へべったり此っちへべったり内股の膏薬侍士(さぶらひ)(洒落本)○膏薬のやうに千社の札をはり/内股の公役〔膏薬とかける〕をするめかけ附(川柳)○諸家〔蘭方〕の伝書といふ者共を見るに、皆膏薬(かうやく)、油(ゆ)薬(やく)の法のみにて委(くわ)しき事なし(蘭学事始)○小指(こいび)に藤(ふじ)の丸(まる)の膏薬(かうやく)を張居(はって)る奴(やつ)だ小{ナ}/此商売(しやうべい)は別して内股(うちまた)膏薬(がうやく)〔あっちについたり、こっちについたり定見のないさま〕がいいのさ(浮世床)○アノ膏薬(かうやく)をはがさずに置て、そしてどふする(滑稽本)○カウヤク 膏薬 膏薬ヲハル/ヌル(ヘボン)○当今の政治家は内股膏薬の典型なり(天声人語)
【補説】
〈内股膏薬{うちまたごうやく@内股膏薬}〉のように、16世紀から現代までよく用いられている言い方もあるように、膏薬はある意味では、近代的医療以前の唯一の治療薬で、日常的にふかくかかわっていた一証拠でもあろう。⇒〈やまいこうもうにいる〉




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537526