候
【そうろう】

s^{o}r^{o}
【近代】〈あり〉の敬語、丁寧語。候文という手紙に用いる語。動詞や形容詞と一緒に用いて、デス・マスと同じく丁寧な言い方となる。[中国語]在。to be.
【語源解説】
古形は〈さもらふ{さもらふ}〉で、サ+守(モラ)フ。サは特に意味なく接頭語、守フはマモル、貴人などのそばにいて見守ルの意。さらに平安時代(9世紀~)には、サブラフ、サムラフと語形変化。名詞形はサブラヒ(侍)、また、子音交替(b→m)によりサムラヒ(イ)の語形が生じる。またサムラフが長音化して、サウラウ→ソウロウ(候)となる。なお、サブロフ(ウ)の語形は、女性の言語生活では、そのままさらに後後まで用いられる。結果的に15世紀にはサムラ(ロ)ウとサブロウが並用され、男・女による用法に区別が生じた。しかし、やがてソウロウに統合された。意味も本来の見守るから、アルの意として敬語→謙譲→丁寧の意と意味内容も変化した(さらに短縮したソロの語形もみえる)。漢字では、伺候の〈候(ソウロウ)〉を用いて定着し現在に至る。なお、~デ候は15世紀のころ、〈デ走(ソウ)→デス〉のように〈走(ソウ)〉をあて、〈デス〉が誕生する(ただし、15、16世紀ごろのみで消滅)。16、17世紀ごろから〈候(ソウロウ)〉は話しことばではなく、書きことば、ことに手紙文での一つの文態として用いられる。
【用例文】
○朝なぎに舳(へ)向け漕がむとさもらふとわがをるときに/伺(サモ)候(ラヒ)(万)○女(にょう)御(ご)、更衣あまたさぶらひ〔お仕えたてまつり〕給ひける中に/これより珍しき事はさぶらひ〔存在する〕なむや(源氏)○めづらかなることにさぶらふ(更級)○行ゑしらずなどは候まじければ/おほせにしたがひ候べく候よし(とはず)○あれ御らん候(さうら)へ/平家以外に過分に候(さふらふ)/あそびもの〔遊女〕のすいさんはつねのならひでこそさぶらへ〔遊女のことば〕(平家)○管絃講(かんげんこう)にて弔ひ申せとの御事にて候程に役者を集め候/是は阿(あ)波(は)の鳴門に一夏を送る僧にて候(謡曲)○Saburai, v{o}, v{o}ta。サブライ、サブラゥ、サブラゥタ ……である。……があるなどの意。文書語/Soro. ソロ sv{o}rv{o}〔サゥラゥ〕に同じ。存在動詞、有、在る、または居るなど。また時としては意味をもたず、書きコトバに連接する助辞(日葡辞書)○久々厚志死後迄難忘存候(芭蕉)○酷暑弥(いよいよ)御壮健つとめ被成候由(よし)めでたく存候(蕪村)○一筆啓上仕候(馬琴)○まつるとは奉(たてまつ)るトいふ事で。男文字ならば奉願候(ねがひたてまつりそろ)といふ心さ(浮世風呂)○無用を以て有(う)用に充(あて)候遠(とほ)きおもんぱかりに御座候(安愚楽鍋)○サフラフ 候 手紙文に多く用いる。古代samur={o}サムロウto be. の語形からでる。候(サモ)ラワバ、候ラワズ、候ラワン、候ラエドモ(ヘボン)○果(はた)せる哉(かな)。渋(しぶ)谷(や)内(うち)よりの文(ふみ)。何を知らせて来たか。皆々様御(ご)推(すゐ)もじ〔推量〕被(くだ)下(され)度(たく)候(そろ)(尾崎紅葉)○覆(おほ)ひをとり申し候へば色蒼(あお)ざめ緊(きび)しく歯をくひしばりゐ申し候(徳富蘆花)
【補説】
昭和10年代(敗戦直前)まで、候文が手紙文態として用いられた。重要なコミュニケーションの記号であった。〈居候(いそうろう)〉の候も、ここの〈候〉と同語。⇒〈いそうろう〉〈さむらい〉

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