月と鼈
【つきとすっぽん】

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【江戸時代】二つのもののつりあわぬことの譬喩。〈提(ちょう)灯(ちん)に釣鐘(つりがね){ちょうちんにつりがね@提(ちょう)灯(ちん)に釣鐘(つりがね)}〉と同じ。[中国語]天壌之別。as different as day and night.
【語源解説】
月は天空、スッポンは池、泥中のものと上下に大きな隔りがあるところからの創作。ただしスッポンは江戸方言(物類称呼)、上方では俗に〈丸魚(まる)〉(西鶴)ともいった。したがって、月もスッポンも同じように丸イ形だが上下と大きな差のあることが意識されていたのであろう。ただしこの譬喩は上方―{2}上方は〈提灯(ちゃうちん)に釣(つり)鐘(がね)〔同じような形でもまったく異なる〕〉―{2}ではみえず、江戸発生と思われる。
【用例文】
○お月様とすっぽん程の違ひなれば/其(その)心(こころ)をくらぶることお月様と泥亀(すっぽん)のごとし(洒落本)○物のいたく異なるたとへごとに月とスッポンと云へるが如し(中略)スッポンを丸(まる)と異名をつけて呼ぶ、漢名にも団魚といふと等し。月は丸き物なれど、丸と呼ぶスッポンとはいたく異なるなり(嬉遊笑覧)○お星さま〔お祖(そ)師(し)様(さま)の地口〕の書た蓮(れん)華(げ)なら、お月さまの書た泥亀(すっぽん)が居るだらう(浮世風呂)○ツキトスッポン(鼈)ホドノチガイ(ヘボン)○僕と彼とを同視するのは、月とすっぽん、うってんばってん、ロンドンのニウスに東京の新聞、日本の書生に英国の学生(スチューデント)(坪内逍遥)○大臣は親任官、新聞屋は素(す)寒(かん)貧(ぴん)、月とすっぽん程の違いだ(正岡子規)

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8537805 |