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蝮・{まむし}
【まむし】


mamusi

【近代】毒蛇。頭が平たく三角、全身が灰黒色で銭形黒褐色の斑点がある。体長は約一尺(30センチ)、上顎に毒牙を二つもつ。湿地を好む。薬用にする。マブシとも。古称はハミ{ハミ}、別称クチバミ{クチバミ}。[中国語]蝮蛇。viper.

【語源解説】
古語では、〈蝮 mini{和名、波(ハ)美(ミ)}〉(和名類聚抄〈虫(ちゅう)豸(ち)類〉)、〈くちはみ〉(徒然草)、〈{まむし)(クチハメ)、蝮(同)/蝮(マムシ)、{まむし)(同)〉(易節用集)とみえる。したがって、〈ハミ=マムシ=クチハミ〉ということになる。さらにハミはヘビ、マムシと同根語。時代的にハミという虫からハミムシとなり語頭のハの音が脱落して、ミムシmimusi→マムシmamusi(母音交替)となった。この転訛は、京都地域が早くおこった。〈真(マ)虫(ムシ)〉は宛字。おそらく日本列島で唯一の身近な毒蛇と、認識されたのであろう。ヘビが蛇の総称となり、単称としてはマムシを用いるようになった。俗に〈まだらむし〉ともいった。

【用例文】
○毒{おろち)(どくへび)ヲクチハミト云フ、イカナル義ゾ。クチト云ハ腐爛(ふらん)ノ心也。サシタル所ニ毒気入テクチ、クサル故ナルヘシ。蝮ノ字ヲバ、ハミトヨム({あい}嚢抄)○赤龍丸云々真虫ノ灰(頓医抄)○アル人マムシヲミテウタゥズル杖(ツエ)ガナカッタ(イソポ)○Mamuxi. マムシ クチハミと同、マムシニクワルル/Mabuxi. マブシ マムシともいい、そのほうがよい(日葡辞書)○まむし(マムシ) 医家其ノ骨ヲ収テ薬物ト為ス、五八草ト云(書言字考)○蛇 俗ニ真虫ト称スル者ハ即チ蝮ナリ、古ヘ久(ク)知(チ)波(ハ)美(ミ)ト称ス(本朝食鑑)○蝮蛇 和名、クチバミ又マムシト云、西土(せいど)ノ俗ニヒラクチト云、人ヲクラヘバ〔人〕往々死ス(大和本草)○蝮蛇 まむし○西国にて、ひらぐちと呼、筑前にて○はめと云、土佐にて、○はみ又くつはみと云、上総房州にて○くちはみと云。是和名、はみ也(物類称呼)○蝮蛇 マムシmini{京} ハミ、ハメmini{共同上}、ヒラクチmini{筑前}(本草)○真(マ)虫(ムシ) 蝮蛇なり(俚言集覧)○まむし(動植名彙)○マムシ 蝮 viper. 毒へびの名。(ヘボン)○まむし〔まハ残酷ノ義〕蝮蛇=ハミ=クチバミ(日本大辞書)
【補説】
真(シン)ノ虫の意で、〈真虫〉とする語源解はとらない。マムシは16世紀ごろからあらわれ、京都方言として用いられ、江戸へもはいって、江戸語→東京語となった。〈蝮〉は『古事記』に、〈蝮(タヂヒ)之(ノ)水(ミズ)歯(ハ)別(ワケノ)命(ミコト)〉とタヂヒでみえる。また、明治以前は〈虫〉の概念は、現代よりはるかに広い。⇒〈へび〉




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8538126