油断・弓断
【ゆだん】

yudan
【近代】注意をおこたること。[中国語]疎忽大意。negligence.
【語源解説】
仏教関連語。『涅(ね)槃(はん)経』に、〈王、一臣ニ勅シテ一油鉢〔油の入れ物〕ヲ持チテ(中略)若(モ)シ一滴ニシテ棄(ステ)バ当ニ汝ガ命ヲ断ツベシ〉とある点などから、〈油断〉の語が創作され、さらに用字には異形が生じた。また、古語〈ゆたに〉(豊か、ゆったりの意)と心の余裕から油断の意をもつようになったか。漢字はむしろ後からあてたか。しかし後者は無理であろう。法灯のための油を断つことは、重大な意味をもつのである。
【用例文】
○弓(ユ)断(ダン)mini{武士}遊(ユ)端(ダン)mini{公家}油(ユ)断(ダン)mini{僧侶}(伊京集)○油(ユ)断(ダン)又由断ニ作ル(雑字類書)○油断(運歩色葉集)○Yudan. ユダン 不注意(日葡辞書)○油(ユ)断(ダン)(易節用集)○油(ゆ)断(だん)を○よだん○学(がく)問(もん)の時(とき)は油(あぶら)の字(じ)をかく。武(ぶ)芸(げい)の不(ふ)嗜(たしなみ)なるには弓(ゆ)断(だん)と書(かく)と云り(嘉多言)○兼而油断仕置候処(芭蕉)○程なくしれて、さてもさても油(ゆ)断(だん)のならぬは都(西鶴)○養生に油断有べからず(好色訓蒙図彙)○油(ユ)断(ダン)mini{涅槃経}、弓断(同)mini{北越軍談}(書言字考)○油(ゆ)断(だん)(早節用集)○けふは小の大晦日一日の違ひとはいひながら一年中の大油断(風俗文選)○油断すな靨(えくぼ)は人の落し穴/油断大敵此晦日どうしやう(川柳)○よく寝(ね)るものだ(中略)あれだから由(ゆ)断(だん)はならぬて(浮世風呂)○ユダン 油断 negligence. 油断タイテキ〔大敵〕inhibitgluemini{inhibitglue〈諺〉}、油断ナクカギョウヲハゲム(ヘボン)○これだもの、油(ゆ)断(だん)も隙(ひま)もありゃしない(二葉亭四迷)

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8538220 |