早わかり日本史 第1章 日本文化のはじまり 縄文から弥生時代へ 286 日本人は大陸からやってきたのか?(日本人の起源) ◎日本人は最初から混血? 日本人の先祖は、いつどこから日本列島にやって来たのか――。これについての研究は数多くあるが、いまだ定説はなく、よくわかっていないというのが現状である。 まず、日本列島にいつから人が住みついたかという問題だが、約10万年前の地層から旧石器が見つかっており、これが確実な生活痕跡と考えられる。最近では、考古学の調査方法が急速に進展しているため、今後の状況次第では、さらに時代をさかのぼる可能性がある。しかし、この時期に生活していた人類は主に旧人といわれる種であった。ただ、私たちの直接の先祖である新人も10万年前に登場してくるから、この石器を使用していたのが旧人か新人か判断するのはむずかしい。 原日本人は、人種的には古モンゴロイドに属する。まだ日本列島が大陸や東南アジアと陸続きであった洪積世(200万~1万年前)に、朝鮮半島や華南、インドシナや台湾、沿海州やシベリアなどから列島に移り住み、混血された結果形成されたのが、日本人の原型(縄文人)だという。 のち(弥生時代)に朝鮮半島から多数の渡来人が来航、縄文人と混血したり彼らを辺境へと駆逐し、主流に取って代わった。そのため、列島は古来からの縄文人と新参の弥生人が共存する二重構造社会になった、とする説がいまのところ有力である。とすれば、現代のわれわれは、縄文人と弥生人の混血といっていいだろう。◎南米の原住民と祖先が同じ? ところで、日本人の由来を、骨格や血液型分布、稲作や文化、神話や言語などの比較によって求めようとする従来の研究方法にくわえ、近年ではテクノロジーの進歩により、思わぬ角度から日本人の先祖を突きとめようとする試みがなされている。 東大医学部の十字猛夫教授(当時)らは、1989年にHLAと呼ばれる白血球の型に日本人特有の配列があることに着目、周辺諸国の同種配列の比率を調べ、日本人の渡来ルートを特定した。そのルートは、従来いわれてきた説とほぼ一致するという。 また、愛知県がんセンターの田島和雄疫学部長(当時)は、白血病ウイルスの型から南米の原住民と日本人が遠い祖先を共有することを1993年に確認した。 さらに1996年、国立遺伝学研究所の宝来聰助教授(当時)らは、母系がたどれるミトコンドリア遺伝子を293人(日本人、沖縄住人、アイヌ人、韓国人、台湾系中国人)から採取、日本人の遺伝子群の65%が弥生時代以降、朝鮮半島をへて大陸からもたらされたものだと判定した。いずれにしても、このようなテクノロジーの進歩によって、日本人の祖先が解明される日も近いと思われる。 日本実業出版社「早わかり日本史」JLogosID : 8539500