経済経営用語 法務(Business Law) 64 買収防衛策【ばいしゅうぼうえいさく】 Takeover Defenses 株式会社が資金調達等の事業目的を主要な目的とせずに新株または新株予約権の発行を行うこと等により自己に対する買収の実現を困難にする方策のことをいう。平成19年12月末時点において導入している企業は約420社であったが、平成21年2月末時点においては、約560社となっている。他方で、公開買付け制度の改正による手続きの整備が行われたことおよび買収に対する最終的な判断は株主に委ねるべきであるとの考えなどに基づき、有効期限の満了した買収防衛策を継続しない事例や買収防衛策を廃止する事例も現れている。買収防衛策には、&wc1;買収が開始される以前の平時において導入し、敵対的買収への対応を事前に開示する事前警告型買収防衛策、&wc2;取得条項付新株予約権を用いた信託型ライツプラン、&wc3;黄金株や複数議決権株式等の種類株式の発行、&wc4;定款変更により合併の承認決議や取締役の解任決議の要件を加重する方法、&wc5;第三者割当増資や新株予約権の第三者割当等がある。そのうち&wc1;と&wc2;の詳細は次の通り。&wc1;事前警告型買収防衛策:買収が開始される前に、買収者が従うべきルールを定め、買収者がルールに違反した場合や企業価値・株主共同の利益を損なうと判断した場合等には、被買収会社において一定の対抗措置をとることを警告する仕組みのものをいう。事前警告型買収防衛策の設計にあたっては、主に以下の事項がポイントとなる。(ア)導入時点における株主意思の確認方法、(イ)独立委員会を設置するか否か、独立委員会の位置付け、(ウ)買収者がルールを遵守した場合にも、防衛策を発動する場合を設定するか否か、(エ)買収防衛策発動のトリガー、(オ)被買収会社・独立委員会の検討期間、(カ)対抗措置の内容(差別的行使条件・一部取得条項を付した新株予約権の無償割当等)&wc2;信託型ライツプラン:まず、買収が開始される前に、差別的行使条件・一部取得条項を付した新株予約権を発行し、有事発生時の株主を受益権者として信託を設定する。敵対的買収者が出現してプランが発動されると、信託銀行から全株主に対して新株予約権を交付し、差別的行使条件に基づき買収者以外の株主のみが新株予約権を行使する、または会社が買収者以外から新株予約権を取得して対価として株式を交付することにより、買収者の持株比率および経済的価値を希釈化する仕組みである。日本においては、信託型ライツプランを導入している例は少ない。経済産業省および法務省が平成17年5月に公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」(買収防衛指針)が参考になる。なお、企業価値研究会、企業年金連合会および東京証券取引所等が、適正な買収防衛策の在り方について公表しており、また、議決権行使助言会社による買収防衛策関連議案に対する助言内容によっては買収防衛策関連議案が否決されるおそれがあるため、買収防衛策の設計にあたっては、一定の配慮をする必要がある。【参照キーワード】→敵対的買収 (c)2009 A&A partners/TMI Associates/ Booz&Company(Japan)Inc./ Meiji Yasuda Insurance Company 日経BP社「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」JLogosID : 8518307