不公正発行
【ふこうせいはっこう】
「著しく不公正な方法」による募集株式または新株予約権の発行等をいう。募集株式または新株予約権の発行が「不公正発行」に該当する場合には、これにより損害を受けるおそれのある株主は、募集株式または新株予約権の発行の差止めを請求できる。どのような場合に「著しく不公正な方法」に該当するかは具体的事案に応じて判断することになる。一般的に、募集株式の発行の場合における「著しく不公正な方法」とは、資金需要もないのに支配権の維持などの不正な目的のために取締役が特定の者に株式または新株予約権を割り当てる場合をいうものと解されている。裁判例の大勢は、「特定の株主の持株比率の低下と現経営者の支配権の維持を主要な目的とするとき」には不公正発行に該当するが、会社に具体的な資金需要があり、その調達方法として第三者割当増資を行なった場合には、不公正発行には該当しないと判断する(主要目的ルール)。これに対して、新株予約権の場合には、発行による資金調達効果がほとんどないことから、不正な目的の有無を、会社の資金調達目的の有無のみによって判断することはできず、個別具体的な事情を考慮して不正な目的の有無を判断していくほかない。
近時は、平時における買収防衛策として新株予約権を発行するケースや、敵対的買収が行なわれた場合に特定の第三者に対して新株予約権を発行するケースが多く、何がその適正な目的といえるかが議論となっている。なお、敵対的買収が行なわれている最中に被買収会社が新株予約権の発行決議を行なった「ニッポン放送事件」においては、東京高決平成17年3月23日が「特定の株主の経営支配権を維持・確保することを主要な目的」とする新株予約権の発行は、原則として不公正発行に該当するが、「株主全体の利益の保護という観点から新株予約権の発行を正当化する特段の事情がある場合には、例外的に、経営支配権の維持・確保を主要な目的とする発行も不公正発行に該当しない」と判示している。
【参照キーワード】
→有利発行
→第三者割当増資
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| 日経BP社 「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」 JLogosID : 8518330 |