奉らす
【たてまつら・す】

((動詞「たてまつる」の未然形+使役の助動詞「す」))[1]〔「たてまつる」が謙譲語の場合〕<ア>〔「す」が謙譲の意を強める場合〕差し上げる。献上する。
[例]「白き木に立て文(ぶみ)をつけて、『これたてまつらせん』と言ひければ」〈枕草子・円融院の御はての年〉
[訳]「白い木に立て文をつけて、『これを差し上げよう』と言ったので」
<参考>「たてまつる」を単独で用いるときよりも敬意が強い。
<イ>〔「す」が使役の意の場合〕差し上げさせる。献上させる。
[例]「門(かど)あけて惟光(これみつ)の朝臣(あそん)出(い)で来たるしてたてまつらす」〈源氏・夕顔〉
[訳]「門をあけて惟光の朝臣が出てきたので(花を)差し上げさせる」
[2]〔「たてまつる」が尊敬語の場合で、「す」が使役の意の場合〕お召しになるようにする。お召しになっていただく。
[例]「御前(おまへ)にはかかるをこそたてまつらすべけれ」〈源氏・手習〉
[訳]「この方(=浮舟)にはこのような衣装をこそお召しになっていただくべきだ」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5087266 |