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小天温泉
【おあまおんせん】


玉名郡天水町小天にある温泉。金峰山群の三ノ岳の西麓に位置し,有明海に近く,背後は全国有数のミカンの産地。「熊本藩年表稿」によれば明和元年,「郡村誌」では安永年間に開かれたという。明治30年頃2軒の温泉宿があった。1つは地元の名望家前田案山子の別邸で,夏目漱石は大晦日にここを訪れ,「温泉や水滑らかに去年の垢」と詠み,数日を過ごした。「草枕」に那古井温泉とあるのがここで,当時は中央政界の要人の出入りも多く,中江兆民や孫文も訪れた。その後水本家が漱石館の名で経営を続けたが,大正7年頃泉源が枯れ廃業,館跡は荒廃し,腐朽が進む。もう1軒は経営者の名にちなみ田尻温泉と称した。道路に近く,現在は小天温泉唯一の温泉宿那古井館が営業する。「草枕」にある鏡ケ池も近く,漱石文学散歩を楽しむことができる。温泉源は,三ノ岳第1溶岩を帽岩とする小天凝灰角礫岩の破砕部にあると推測され,単純温泉で無色透明,微弱アルカリ性で,泉温は30~37℃。湯量は毎分約500ℓ,効能はリューマチ・神経痛・胃腸病・婦人病など。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7224012