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桜なべ 中江
【さくらなべ なかえ】


桜なべは味噌だれが決め手

桜なべ 中江

明治38年(1905)の創業当初は目の前に吉原の大門を控え、周辺の同業も合わせて、客は吉原の行き帰りに馬力をつけたい男ばかり。そして今、店は中江のみが残り、一方で馬肉は体にも美容にもいいとあって「客は女性が半分か、それ以上」(4代目当主・中江白志さん)というほどさま変わりした。

中江では福岡県の牧場に依頼して、雌の食用専用馬を7~8歳になるまで育ててもらっている。「若い馬肉は味がのってないから。7~8歳なら煮ても味が逃げ出さない」と中江さん。

鍋に味噌だれを用いるのは、他店との差別化を図った初代の工夫だ。鍋にとろける味噌の香ばしさに陶然としつつ、ロースやヒレはさっと火を通した桜色くらいが食べごろ。バラや脂身はじっくり煮込んで、脂が飴色に透き通ったころがいい。

大正13年(1924)に宮大工が建てた貴重な商家建築の店は、毎夜大いに賑わう。なかでも女性客の健啖ぶりに、神棚に鎮座する大黒天と馬頭観音も目を細めているかのようだ。




東京書籍
「東京5つ星の肉料理」
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