時事用語のABC 社会 行政・仕組み 326 自筆証書遺言書保管制度【じひつしょうしょゆいごんしょほかんせいど】 自筆の遺言書を法務局で保管してくれる制度のこと。2018年に国会に提出され同年7月6日に可決・成立、2020年7月10日に施行された。今までの方式に比べ初の仕組みや多くのメリットがあり状況によっては画期的な仕組みといえる。法務局で遺言書の成立要件を確認してもらえるほか、死亡届が提出されるのと連動して遺言書の存在を任意の相手に通知する仕組みなども盛り込まれている。手数料も3900円(印紙納付)と安価であり、閲覧は全国の対応法務局からモニター経由でできるなど取り回しもし易い。ただ、制度の利用には事前予約をし、対応法務局(最寄りの法務局・出張所とは限らない)に出向く必要があり、また遺言書の成立要件のチェックは行ってもらえるが中身(内容)については関知されないため、遺言内容は自身で吟味する必要がある。遺言書の形式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」と大きく3種類あり、それぞれ状況に応じて使い分けることができる。もともと自筆証書遺言は、自身で手書き(一部財産目録等はワープロ出力が可能になった)した物を封筒等にいれ封印することで保管するのが一般的な方式。すべて自身で管理できるため、更新や破棄なども自由に行える反面、遺言書としての形式(自筆・署名捺印・日付の明記など)を満たしていないと無効になる。遺族が遺言書を有効にするためには家庭裁判所で「検認」手続きを行う必要があるなど手間や時間もかかるのも特徴。また相続人の間で揉め事がある場合遺言書の有効性について争われたり、特定の相続人等が遺言書を発見しても都合が悪い場合に破棄してしまうなどの事態も起こりうるため、執筆後の管理についても細心の注意を払う必要があった。これらに対して公正証書遺言は、成立時に公証役場で2名の証人とともに保管されるため遺言書の有効性について争いになることは少ないが、手間や費用がかかることなどから状況に応じた更新などがし辛いデメリットもあった。このように、保管制度は自筆証書のメリットと公正証書のメリットを組み合わせ、それぞれのデメリットを軽減する仕組みとなっているため十分活用できる。法務局側がうたうメリットは以下の通り。◆相続開始前・遺言書の成立要件がチェックできる・公式に法務局が保管するため遺言書の紛失亡失のおそれがない・利害関係者による破棄隠匿改ざんを防げる◆相続開始後・家庭裁判所の検認が不要・相続人が法務局で閲覧・証明書交付が受けられる・任意の方に通知できる・相続人の誰かが閲覧した際、他の相続人にも通知される(2022/2,K) 時事用語のABC「時事用語のABC」JLogosID : 14425674