労働契約法

labor contract law
労働者と会社とが結ぶ雇用契約の基本ルールを定める法律。現在、制定に向けた調整作業が進められている。現代社会では労働関係も契約関係であり、当事者(労働者と使用者)の合意・契約によって権利・義務が定まると考えられる。日本では、個々の労働者と企業が結ぶ雇用契約は、労働基準法が最低限の基準を定めている。これを踏まえて、労働組合などが経営者と交渉して決める労働協約や就業規則に基づき契約が結ばれる。しかし、労働契約上の権利や義務を幅広く規定した法律はなく、労働者個人と会社が争う場合、裁判所の判例の蓄積だけが解決のよりどころとなっていた。近年、労働者個人と会社が対立する事例が増え、労働基準法とは別の民事上のルールとして法制化を求める声が高まってきた。こうした要請を踏まえ、厚生労働省が当初示した労働契約法の検討用素案は、次のような点を含んでいる。(1)労使委員会の常設(委員の半数以上が事業所の労働者を代表。委員の5分の4以上が賛成すれば就業規則を変更できる)、(2)解雇の金銭解決制度(裁判で解雇を争い無効の判決の場合でも、解決金を支払うことで労働契約関係を解消することができる)、(3)有期労働契約の手続き整備(経営者が契約期間を書面で明示しなかった場合、法的には期間の定めがない契約とする)、(4)雇用継続型契約変更制度(労働条件を変更しようとする経営側の申し出を労働者が受け入れなかった場合も、解雇されずに協議を続ける制度を設ける)。厚生労働省はさらに、これと並行して、(1)長時間労働是正のため残業代割増率を月30時間を超える場合に50%とする、(2)時間にしばられない労働契約を認める、(3)派遣・パート社員など非正規社員の正社員化をはかる、など働き方の変革に向けて新たな労働ルールの素案提示も行っている。しかしこうした案には労使それぞれが合意しない点も多く、2007年春に労働契約法制定、労働基準法改正という形にまとまるまでにはかなりの議論が必要とみられる。

![]() | 朝日新聞社 「知恵蔵2009」 JLogosID : 14845553 |