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いとほ・し
【いとほ・し】


[形][シク](しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ

いとほ・し(イトオシ)
「いたはる」(=苦労する)、「いたはし」(=苦しい・大切にしたい・気の毒だ)と関係のある語といわれ、心を痛める意。「いとほし」が「いとをし」「いとおし」を経て室町時代末期に「いとし」の形となり、現代語の「いとしい」になっている。


[1]かわいそうだ。気の毒だ。
[例]「翁(おきな)を、『いとほしく、かなし』と思(おぼ)しつることも失せぬ」〈竹取・かぐや姫の昇天〉
[訳]「翁を、『かわいそうで、いとしい』と(かぐや姫が)お思いになった気持ちも消えた」
[2]かわいい。いじらしい。
[例]「宮は、いといとほしと思す中にも、男君の御かなしさはすぐれ給ふにやあらん」〈源氏・少女〉
[訳]「大宮は、たいそうかわいいとお思いになる(孫たちの)中でも、男君(=夕霧)をかわいいと思うお気持ちはほか(の孫たち)よりまさっているのであろうか」
[3]いやだ。困る。
[例]「強ひていとほしき御振る舞ひの絶えざらむもうたてあるべし」〈源氏・空蝉〉
[訳]「(光源氏の)強引で困るおふるまいが絶えなかったら、情けないにちがいないだろう」
<参考>「いとほし」も「かなし」も身近な者を気の毒だ・かわいいと思う気持ちを表すが、「かなし」はより切なくとどめがたい感情を表す。「かはゆし」は「かほ(顔)」にまばゆい・きまりが悪い意の「はゆし」が付いた語で、もともと恥ずかしさを表す。相手に対して用いられると、目をそむけたくなるほどみじめだ・哀れんでやりたいほど愛らしい意となる。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5074408