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即ち・則ち・乃ち
【すなはち】


<一>[名]<二>[副]<三>[接]

すなはち【即ち・則ち・乃ち】(スナワチ)
[名]《時機》その時。即座。即刻。途端。→<一>[1]
《当時》そのころ。当時。その当座。→<一>[2]
[副]《即座》すぐに。ただちに。即座に。→<二>
[接]《言い換え》つまりは。言い換えると。→<三>[1]
《理由》そこで。そういうわけで。→<三>[2]
《場合》そのようなときは。→<三>[3]
もともとはある時点の意を表していたが、「即時」の意の場合の「即」の訓に用いられ、「即座」「即刻」という名詞としての意が生じ、ここから「ただちに」という副詞の意も生じた。さらに「即」の他の意や漢文訓読で「則・乃・便」などに「すなはち」の訓が用いられたことから、「そこで」などの意の接続詞としても用いられるようになった。
<一>


[1]その時。即座。即刻。途端。
[例]「◎ほととぎす鳴きしすなはち君が家に行(ゆ)けと追ひしは至るらむかも」〈万葉・八・一五〇五〉
[訳]「◎ほととぎすが鳴いたその時、あなたの家に行けと追いやったが、(その鳥は)着いただろうか」
[例]「其(そ)れをすなはちは云(い)はずして」〈今昔・一九・二九〉
[訳]「それ(=子を海に落としたこと)を即座には言わないで」
[2]そのころ。当時。その当座。
[例]すなはちは、人みなあぢきなき事を述べて、いささか心の濁(にご)りもうすらぐと見えしかど」〈方丈〉
[訳]「(地震のあった)その当座は、人々はみな(煩悩(ぼんのう)などの)この世のむなしいつまらなさを述べて、少しは心の汚れも薄らぐように見えたが」
<二>すぐに。ただちに。即座に。
[例]「たて籠(こ)めたる所の戸、すなはち、ただ開(あ)きに開きぬ」〈竹取・かぐや姫の昇天〉
[訳]「(かぐや姫を)閉じ込めてあった所の戸は、即座に、ただもうすっかり開いてしまった」
[例]「夏よりすでに秋は通ひ、秋はすなはち寒くなり」〈徒然・一五五〉
[訳]「夏の間からもう秋の趣が入りまじり、秋はすぐに寒くなり」
<三>
[1]つまりは。言い換えると。とりもなおさず。
[例]「一時の懈怠(けだい)、すなはち一生の懈怠となる」〈徒然・一八八〉
[訳]「一時の怠りが、つまりは一生の怠りとなる」
[例]「狂人の真似(まね)とて大路を走らば、すなはち狂人なり」〈徒然・八五〉
[訳]「狂人のまねだといって大通りを走るならば、(その人は)とりもなおさず狂人である」
[2]そこで。それで。そういうわけで。
[例]「おのづから短き運を悟りぬ。すなはち、五十(いそぢ)の春を迎へて、家を出(い)でて世を背(そむ)けり」〈方丈〉
[訳]「自然と、自分の不運を悟った。そこで、五十歳の春を迎えて、出家し遁世(とんせい)した」
[3](主として漢文訓読文に用いて)そのようなときは。そういう場合は。
[例]「君安ければすなはち臣安く、臣安ければすなはち国安し」〈平家・一〇・請文〉
[訳]「君主が安らかであればそのようなときは臣下も安らかであり、臣下が安らかであればそのようなときは国も安らかである」




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5086550