縁・因・便
【よす-が】

[名]
▲「寄す処(か)」を語源とし、身や心を寄せるよりどころがもともとの意であるが、頼りとする人や手段などの意を表すのにも用いられる。上代は「よすか」。
[1](身や心を)寄せる所。よりどころ。ゆかり。
[例]「ほととぎすのよすがとさへおもへばにや、なほさらにいふべうもあらず」〈枕草子・木の花は〉
[訳]「ほととぎすが身を寄せる所とまでも思うからであろうか、ますます言いようもない(ほどすばらしい)」
[2](頼りとする)縁者。夫。妻。子。後見人。
[例]「もとより妻子なければ、捨てがたきよすがもなし」〈方丈〉
[訳]「もともと妻子もないので、捨てがたい(心残りになるような)縁者もない」
[例]「まだきにやむごとなきよすがさだまり給へるこそ」〈源氏・帚木〉
[訳]「まだお若いのに、身分の高い奥様がお決まりでいらっしゃるのは」
[3]手段。方法。手がかり。
[例]「餓(うゑ)を助け、嵐を防ぐよすがなくてはあられぬわざなれば」〈徒然・五八〉
[訳]「飢えをしのぎ、風雨を防ぐ手段がなくては生きていられないことであるから」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5091176 |