稲子沢
【いなござわ】

旧国名:甲斐

(中世)戦国期に見える地名。山梨郡のうち。永禄６年11月吉日付恵林寺領御検地日記・同年10月吉日付恵林寺領穀米并公事諸納物帳に「いなこ沢之清六・いなこ沢の新次郎」と当地の百姓が所見する（甲州古文書３）。同史料によれば，武田氏の検地によって把握された恵林寺領は郷分・両町屋（三日市場・九日市場）分・黒沢分の３地域にわたり，年貢地・公事地・穀米地・神田などの地目に分かれていた。当地は黒沢に属した。清六は当地の年貢地に２貫275文の高を有し，うち１貫190文を年貢として恵林寺に納入，175文分を「稲子沢平之納物」として同寺に勤仕した。納物の内訳は「すち壱荷・萱壱駄・造営人足拾人」などであった。また，公事地には780文の高を有し，591文を上納，42文分を「黒沢之納物」として恵林寺に勤仕した。内訳は「粟壱升・柿壱把」であった。このほか，清六は検地日記の「杣山免成方ニ成」の項に高450文が記され，神田には180文の高があった。つぎに新次郎は神田に高180文（うち３文は９年に１度の大つくゑ祭の用途）・高350文（うち40文は天神祭の用途）を有していた。現在の三富村上柚木字稲子沢に比定される。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7096086