100辞書・辞典一括検索

JLogos

43

美濃国
【みののくに】


旧国名:美濃

旧国名。律令制上の国で,東山道八か国の1つ。現在の岐阜県の南部を占める地域にあった。東は信濃国,西は近江国,南は,東から三河国・尾張国・伊勢国,北は越前国・飛騨国に接する。国名は,三野(古事記・万葉集),御野(正倉院文書,大宝2年戸籍),美乃(政事要略・扶桑略記),三乃(類聚雑要抄)とも書かれ,美州(田氏文集・日本紀竟宴和歌),濃州(本朝無題詩)とも称する。地名の由来は,各務野(かかみの)・青野・賀茂野(または大野)の3野あるゆえに三野と名づけられたとの説(新撰美濃志),真野(まぬ)の名義から転化したとの説(古事記伝),野は,大和の宇陀野,河内の交野(かたの)のごとく,禁野(天皇の狩野)の意で,天皇家の禁野があったので(三代実録,元慶6年12月21日条),美称して御野と称したとの説(新撰美濃志),道の左り(飛騨)・みぎり(美濃)の義とする説(南留別志),美濃絹が上品であったので,ヨクコマヤカの義とする説(名語記),「万葉集」に「百小竹(ももしぬ)の三野(みぬ)王」(巻13‐3327)とある「百小竹」は,三野の枕詞で,小竹はしなえの借訓で,しなえた多くの草でつくった簑から生じた地名とする説(冠辞考),小竹は文字どおり小竹(篠)で,篠の多く生えている三野であるとの説(万葉集古義)などがある。最近では,柳田国男が美濃・耳納・三納など,ミノと読む地名をあげ,これらは一方が山地で,わずかな高低のあることを意味した地名であるとし,島根県美濃郡,岡山県の三野県(みぬのあがた)などを例示した(地名考)。当国本巣郡に美濃郷があり(和名抄),本巣郡は,根尾(ねお)川両岸を占める山地丘陵地帯で,美濃国造の本拠とされているので,柳田説も捨てがたい。
(古代)国名の初見は,「日本書紀」大化元年7月己卯条に,忌部首子麻呂を美濃国に遣わし,供神の幣を課すとある条であるが,これが,律令制の国名とするわけにはいかない。
 また,中央と地方を結ぶ駅制も整備され,美濃国を通過する東山道は,京から陸奥国に至る官道としても整備され,東山道は近江国横川【よかわ】駅から,不破路を経て美濃国に入り,不破駅―大野駅―方県駅―各務駅―可児駅―土岐駅―大井駅―坂本駅の8駅を経て,信濃国阿智駅に通じ,方県駅から分岐して武芸駅―加茂駅を経て飛騨国に入る支路が設けられた。
 壬申乱以前に,東宮湯沐が設定されたごとく,当国と皇室との関係は古く,奈良期以来勅旨田が設定され(石崎直矢氏文書・寧遺),桓武天皇勅旨田は皇女朝原親王に伝領され,その遺言によって弘仁9年3月,東大寺に施入された茜部【あかなべ】荘(厚見郡)天平勝宝八歳の勅施入である東大寺領大井荘をはじめ,9世紀には,最初の人臣摂政となった藤原良房の建立した貞観寺領多芸荘(多芸郡)・若女荘(安八郡)・長友荘(同郡)・栗田荘(大野郡)が成立したのは,良房が死後,美濃国に封ぜられ美濃公の謚【おくりな】を与えられたことと合わせて,摂関家領が皇室領とともに数多く当国に成立する関係を示している。
(中世)元暦2年4月源頼朝は,頼朝の推挙なしで京官に任じた東国御家人を怒って,墨俣以東に下向することを禁じた。
 信長の美濃攻略の成功の原因の1つに,西美濃三人衆の内応があるとされている。
(近世)天正3年信長の長子信忠は,家督を譲られて,美濃・尾張両国主となったが,本能寺の変で父とともに自殺し,変後の処理を行った秀吉は,美濃国は信孝,尾張国は信雄の支配とし,両国の国境を木曽川と定めた。
 慶長5年天下分け目の戦が,関ケ原で行われたことは,当国が依然として天下の要であることを示すものであるが,それだけ戦後の影響も大きかった。
 徳川氏の直轄領は,ほぼ豊臣氏の蔵入地と東軍の没収地をもって構成したが,元和2年の「美濃国村高領知改帳」によれば御蔵入総高は5万2,240石余,山県・安八・不破・大野・賀茂・羽栗・石津・本巣・武儀・方県・多芸・厚見・池田・土岐の14郡143か村にわたっている。
 江戸幕府の成立とともに全国の交通路は,律令体制下の七道は,江戸中心の五街道と多くの脇街道にと編成換えした宿駅制度が整備された。
 こうした幕藩体制下で,美濃国は,ほぼ1,000か村で発足したが,新田開発の進捗につれて,新村の増加は著しく,正保2年に総石高60万8,750石・1,253か村,元禄14年に64万5,101石・1,631か村を示した。
(近代)幕末の美濃国には,大垣藩・郡上藩・加納藩・岩村藩・高須藩・今尾藩・野村藩・苗木藩・高富藩のほかに71家の旗本,尾張藩・磐城平【いわきだいら】藩・備中岡田藩と幕府の支配が交錯していたが,徳川慶喜の大政奉還に続いて明治2年大垣藩主版籍奉還を最初として,美濃国内の諸藩主相次いで奉還を申し出た。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7108914