鹿跳橋
【ししとびばし】

鹿飛橋とも書く。大津市石山南郷町と大津市大石東町とを結び,瀬田川に架かる橋。「輿地志略」には鹿跳について,狭い所は幅が約7m(「地名辞書」では約11m)で,鹿も飛び越える川幅だったためこの名があると記されている。川底に奇岩が起伏し,甌穴地帯となっていた。「立木山略縁起」によると,弘仁6年,弘法大師が瀬田川の急流を前に思案をしていると,白い雄鹿が大師を背に乗せて激流を飛び渡ったとあり,それ以後「ししとび」と呼ぶようになったという。琵琶(びわ)湖から南流した瀬田川が,この橋をくぐった所で大きく西に曲がり,石山外畑(いしやまそとはた)町から京都府宇治市方面へと流れていく。この橋付近は,以前は「こめかし(米浙)」などと呼ばれるほどの急流であったが,下流の天ケ瀬ダムの完成で水位も上昇し,現在は流れもゆるやかになっている。しかし奇岩も一部見られて,昔の面影を残している。大津方面からこの橋を渡ると,主要地方道大津上野線を通って甲賀郡信楽(しがらき)町・三重県上野市方面(伊勢街道)へ,また,県道宇治田原大石東線を通って,宇治市方面へと通じている。明治28年5月28日,木造の鹿跳橋ができ,昭和2年,鉄筋の橋に架け替えられ,昭和39年3月に現在のコンクリート橋になった。同時に,信楽川には宮前橋,大石川には小林橋ができて,石山・南郷・宇治が結ばれることになった。長さ75m・幅6m。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7132626 |