常盤池
【ときわいけ】

宇部市大字上宇部・沖宇部・西岐波にまたがる灌漑用溜池。常盤湖ともいう。宇部丘陵地の新田開発のために築造された。元禄8年,宇部の領主福原広俊が家老椋梨権左衛門俊平に命じて,丘陵中の広くて長い浸食谷の最狭部に堤高12.8m,堤長65mの堰堤(本土手)を築き,周囲の台地から流入する水が自然にたまるようにしたもので,元禄10年に完成(宇部市史)。満水面積102ha,有効貯水量264万m(^3),最大水深10.4m,周囲12kmの規模をもち,宇部市内にある約1,000か所の溜池の中ではもちろん,県下1万900か所のうち最大の溜池である。池の形は掌状をなし,沿岸一帯は植樹されている。常盤池からの灌漑用水幹線は3本あり,第一水路(野中樋)は野中・恩田・梶返(かじがえし)方面,第二水路(本土手の樋門)は野中・則貞・草江・五十目山(ごじゆうめやま)・岬・笹山・芝中・琴芝方面,第三水路(女夫岩樋)は亀浦・草江・笹山・恩田・芝中方面を灌漑する。築造当時の受益面積は305町9反7畝とされる(注進案)。用水路の開栓は6月下旬,閉栓は9月末で,灌漑区域から水世話人が出て用水の調節などを行う。大正5年,集水量を増す目的で本土手の南西に補助池として女夫岩池築造に着工,同6年完成。明治末頃からの炭鉱事業の発達に伴って,宇部地区の工業用水の需要が高まった。常盤池用水を工業用水としても利用することになったが,これは灌漑用水を奪うことになり,しかも水量も十分ではなかったので,厚東(ことう)川の五田ケ瀬堰下流の末信取水口よりポンプで揚水し,貯水槽から8.2kmの送水管で常盤池まで導水した。工業用水は,昭和18年の常盤池用水改良工事で設置された本土手取水塔の制水弁により,工業用水樋を通じて給水される。今日,常盤池周辺は公園として整備されており,池には白鳥350羽,黒鳥150羽が放たれ,またコイ200万尾が放流されている。昭和33年にはときわ遊園地が開園し,一帯は行楽の場となっている。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7193731 |