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山川港
【やまがわこう】


鶴ノ湊ともいわれた(地理纂考)。薩摩半島南東端の揖宿(いぶすき)郡山川町東部にある第3種漁港。串木野・枕崎・阿久根とともに県下四大漁港の1つである。霧島屋久国立公園のうち。爆裂火口の東部が浸水してできた山川港を利用した天然の良港である。直径約2km・深さ40m。湾口は長さ約1kmの砂嘴が発達し,集落が密集している。この砂嘴が外海の風浪をさえぎる役目をするので,古来風待港としての価値が高く,現在でも台風時の避難港として広く利用されている。台風時は小船から500t級の船まで避難密集するのが常である。「三国名勝図会」に「天然の海湾,周廻凡一里,港口東に向ひ闊さは凡八町,港底深さ数十尋,港の総状瓢に似たり,泊繋する時は大船巨船も安穏,かかる良港あること少し,天下の良港,琉球諸島に往来する者,皆風候を待つ所とせり」とある。鹿児島湾の入口に当たり古くは異国船番所を置いた貿易港(密貿易)である。慶長14年島津氏の琉球出兵の基地や風待港として利用された。別称については「地理纂考」に「形状,鶴ノ両翼ヲ伸シタル形チニ似タリトテ里人ハ鶴ノ湊トモ称ヘリ」「支那及朝鮮等ノ漂船近地ニ来着セシ時ハ此港ニ引入レ後長崎ニ護送ス」とある。そのような利用と並行して捕鯨やサンゴ採集の基地などとなり,現在のカツオ漁業の基地に発展した。天然の良港のため,あまり大掛かりな築港工事は行われていない。昭和52年から同57年にかけての山川港修築事業計画は現在進行中である。この計画は,天然の港湾の景観に初めて変化をもたらす大掛かりな計画で,砂嘴と金比羅鼻の間の港から見て,外側に防波堤・岸壁・埋立地の造成などにより主として加工団地が形成されることになる。現在カツオの水揚げが圧倒的に多く,次いでマグロ,その他となっている。地元のカツオ船の出漁先は,59t型3隻は七島付近,200~500t型6隻はカロリン諸島付近である。昭和54年,登録漁船117隻(4,229t),利用漁船651隻(3万4,330t),属地陸揚げ1万8,879t・40億5,200万円(枕崎,阿久根に次いで県下3位)。利用漁船の中には宮崎県のものが相当数を占めている。カツオ節の製造が盛んで,かつては4~7月のカツオ節製造の最盛期には土佐方面から技術者の季節移住がかなりあったという。現在カツオ節加工業者75,うち土佐出身系統(地元では土佐納屋と呼ぶ)が25を占める。加工業者は湾の裏側の砂嘴海岸沿いに集中している。カツオの港としては枕崎と並ぶ県下の二大漁港。係船岸壁(深さ3.8m)やカツオ水揚場のほか,造船所が2か所ある。港口付近ではハマチの養殖も行われる。昭和34年から対岸大隅半島へ貨客船が往復するようになり連絡地となった。現在伊座敷と根占の間を1日5航海している。船着場から対岸の国鉄山川駅までは国鉄バスが連絡している。湾岸には含塩化土類弱食塩泉があり,国鉄指宿枕崎線が通じる。また近くに長崎鼻や鰻池(火口湖)などの景勝地もあり,南薩観光の1拠点をなしている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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