100辞書・辞典一括検索

JLogos

21

井口(古代)


平安期に見える地名出羽【いでは】郡のうち「三代実録」仁和3年5月20日条(県史15上)に「出羽守従五位下坂上大宿禰茂樹上言,国府在出羽郡井口地」とある出羽国司坂上大宿禰茂樹は嘉祥3年の大地震のため土地が沈下し,海岸線が迫ったので,出羽国府を当地から最上郡大山郷保宝士野に移転することを上言したしかし朝廷はこれを許可せず,「旧府近側高敞之地」に移すことを命じている井口の国府建造は,延暦年間の坂上田村麻呂の奏請により,弘仁年間に陸奥守従五位上小野岑守が行ったとあり,9世紀初頭のことであるこの井口の比定地について,酒田市広野新田説・酒田市吉田説・酒田市城輪【きのわ】説などがあるこのうち,酒田市城輪説が妥当か地質学的にいって,古代社会,酒田市の東部一帯,庄内平野を南北に結ぶ中心線よりやや西側の地域が湿地帯であったことが確認されており,井口(城輪)にあった国府の近くまで海水が迫ったという「三代実録」の記事と合致するまた城輪柵の発掘調査の結果,同遺跡の規模と建物の構成・配置は各地の国府と同じである点から,同遺跡は9世紀前半以降の出羽国庁跡とされているただし,城輪説にも問題がないわけではない「三代実録」の記事によれば,国府は出羽郡井口の地にあったとあるが,井口に比定される城輪の地は,古代の飽海【あくみ】郡井手郷のうちで「三代実録」の記事と合わないあるいは「三代実録」に載っている出羽郡井口は飽海郡井口の誤りか




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典(旧地名編)」
JLogosID : 7261728