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武尊山
【ほたかやま】


県北部,利根郡の中央に位置する截頭円錐形の成層火山。標高2,158m。水上町と川場村の境界をなす沖武尊を主峰とする。山頂部の南側は開析が著しく進み,馬蹄形の凹地形を呈している。それを囲むように西に剣ケ峰山(2,020m),東に家ノ串(2,103m),剣ケ峰(2,040m),前武尊(2,039m)などがある。山麓は南北約14km・東西約17kmの広がりをもち,その範囲は沼田市・水上町・川場村・片品村の1市1町2村に及んでいる。山名はホタカ神信仰や日本武尊の東征伝説に由来するといわれている。基盤岩類として東側では花崗岩・流紋岩・泥岩などが,北側では第三紀層の砂岩が,西側でも花崗岩が標高1,000mから1,100m付近まで分布している。火山活動は第四紀洪積世に起こり,高さ1,000m前後の溶岩類が基盤岩類を覆っている。火山体は主に複輝石安山岩質の溶岩および火山砕屑岩から成り,溶岩流が流状構造で緩斜面を形成する部分も少なくない。これらの緩斜面は標高1,200mから1,500mの山麓に多く分布し,玉原(たんぱら)(水上町)・武尊田代(水上町)・武尊牧場(片品村)・川場牧場(川場村)・上の原(水上町)などの高原を形成している。山体は浸食が進み,山麓は武尊九十九谷と呼ばれる数多くの放射谷により深く刻まれている。川場谷・荒山沢・大品沢・西俣沢・大沢・手小屋谷・武尊川・奈女沢が主な谷であり,いずれも滝と釜が連続している。放射谷の末端部では水稲作が行われており,火山斜面は林野や畑地になっている。かつては修験道の道場であり武尊講の信仰の対象であったが,交通の便が悪いため最近まで訪れる人は少なかった。昭和48年に運輸省から大規模レクリエーション地区の指定を受け,観光開発やレクリエーション施設の整備が進められてきた。山麓には片品村営の武尊牧場があり,ポニー・山羊・ホルスタイン牛などが放牧されている。牧場にはレンゲツツジの群落があり,昭和33年に県天然記念物になっている。6月から10月にかけてはキャンプ場が4か所に開設され,ハイカーでにぎわいをみせる。前武尊(片品村)・武尊オリンピア(片品村)・宝台樹(水上町)の各スキー場も立地し,冬季にはスキーヤーでにぎわい,花咲・宝台樹・藤原などの農山村は民宿村に変貌している。さらに林野庁からも武尊総合森林レクリエーションエリアに指定され,観光開発に拍車がかけられている。また山麓一帯は武尊自然休養林に指定され,原生林が自然の姿そのままに保存されている。植生は日本海型気候の影響を受け,チシマザサやオオバザサを下草にもつブナの原生林が卓越している。標高1,500m以上の亜高山帯ではチシマザサとオオシラビソ・ダケカンバ・コメツガの林が卓越するようになり,山頂部はチシマザサの群落やハイマツの林で覆われている。山麓の玉原や武尊田代には湿原が分布し,多くの湿原植物が群落をつくっている。登山口は東の花咲口・武尊牧場口,南の川場口,西の藤原口の4つである。




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「角川日本地名大辞典」
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