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IPBES
【あいぴーべす;いぷべす】


Intergovernmental science and Policy platform on Biodiversity and Ecosystem Services

生物多様性生態系サービスについての政府間科学政策プラットフォーム。生物多様性の科学的な評価と生態系保全などの政策提言を目的とする国連の専門機関で、気候変動枠組み条約を支えるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の生物多様性版を目指すもの。2010年10月に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議で設立が決まり、12月の国連総会で正式に採択された。
生態系には気候変動のように気温や海水温などわかりやすい基準がなく、生態系破損の測定方法の確立など科学的な課題も多い。たとえば、絶滅危惧種や絶滅した種の数の推定値が生態系破損の目安だが、科学的な測定データに乏しく、評価方法も確立していない。
地球上の生物種の数を推定することも難しい。脊椎動物や種子植物の種は把握できても、菌類や微生物は種の数も生態も未知の領域が多い。生物多様性条約の柱の1つが微生物や菌類などの遺伝子資源にあり、その科学的な計量や評価は重要なテーマ。同条約の柱である、先住民族などの伝統的知識を科学的に評価する方法の確立も共通化は難しい。課題山積だが、国連の「ミレニアム生態系評価(MA)」が参考になる。MAは2001年から5年間、世界95カ国、1360人の科学者が参加した研究プロジェクトである。
一方でIPBESは、科学的知見を具体的な政策に活用するかけ橋としての役割を担うことになる。植物や微生物を含めた多様な種の科学的な計量手法や評価方法を確立してデータを集積することは、途上国と先進国の対立を解決する前提になる。日本政府はIPBESに積極的に貢献する方針で、研究費の拠出を決めたほか、事務局の誘致に乗り出した。




(c)日経BP社 2011
日経BP社
「プロフェッショナル用語辞典 環境テクノロジー」
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