脂質
【ししつ】

脂質は細胞膜の主要な構成成分で、エネルギー源としても利用される。脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)やカロテノイドの吸収も助ける。飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸は体内で合成できるが、n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸は体内で合成できないため、食事から摂取する必要がある。脂肪は炭水化物やたんぱく質の2倍以上のエネルギー価を持つため、人間の体内では“備蓄用のエネルギー源”として優先的に蓄積されると考えられている。また、コレステロールは細胞膜の構成成分であり、肝臓で胆汁酸に変換されたり、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、ビタミンDの前駆体となる。
>脂質(脂肪エネルギー比率)
成人の場合、食事で得る総エネルギー量に対し、脂質からの摂取エネルギーが占める割合(脂肪エネルギー比率)は1日の目標量(範囲)が示されている。30~49歳の場合の脂肪エネルギー比率の目標量は男女とも1日20%以上25%未満。
>飽和脂肪酸
カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など。肉や卵、乳製品などに含まれる動物性脂肪のほか、ココナツ油、ヤシ油など熱帯植物の油脂に多く含まれる。摂取量が多くても少なくても、生活習慣病のリスクを高くするため、食事で得る総エネルギー量に対し、飽和脂肪酸からの摂取エネルギーが占める割合は1日の目標量(範囲)が示されている。30~49歳の場合は、男女とも1日の総エネルギー摂取量の4.5%以上7%未満。
>一価不飽和脂肪酸
ミリストオレイン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エルカ酸など。動物性脂肪やオリーブ油、アボカド油などに多い。飽和脂肪酸を原料にして体内で合成できるため、必ず食事から摂取しなければいけないわけではない。そのため一価不飽和脂肪酸に関しては目安量も耐容上限量も設定されていないが、過剰摂取は控えるよう注意換起されている。
>n-6系脂肪酸
リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸など。リノール酸は植物に多く存在し、大豆油、コーン油、サフラワー油などの調理用オイルに多い。日本人が摂取するn-6系脂肪酸の98%がリノール酸。アラキドン酸は肉、卵、魚などに多い。体内で合成できないので食事から摂取する必要があり、目安量と目標量(総エネルギー摂取量に対してn-6系脂肪酸によるエネルギー摂取量の割合、上限値)が示されている。1日の目安量は30~49歳の場合、男性10g、女性9g。目標量は男女とも1日の総エネルギー摂取量の10%未満。
>n-3系脂肪酸
α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸など。体内に入ったα-リノレン酸は、一部EPAやDHAに変換される。α-リノレン酸の摂取量はn-3系脂肪酸の総摂取量の59%を占める。n-3系脂肪酸は体内では合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症するため、17歳以下と妊婦、授乳婦では目安量が示されている。また、中性脂肪の低下、不整脈の発生防止、血管内皮細胞の機能改善、血栓生成防止作用など、様々な生理作用が確認されており、積極的な摂取が生活習慣病の予防効果を示すことから、18歳以上で目標量(下限)が設定されている。30~49歳の場合、1日男性2.2g以上、女性1.8g以上。さらに、EPAとDHAに関しては、1日1g以上摂取することが望ましいと明記されている。
>コレステロール
体内で合成できる脂質。食事で多く摂取すると肝臓でのコレステロールの合成が減少し、食事からの摂取が少ないとコレステロールの合成が増加するといった調整機構が働くため、コレステロールの摂取量がそのまま血中総コレステロール値に反映されるわけではなく、個人差も大きい。ただし、反応性の強い人は食事でとり過ぎると血中のLDLコレステロールの増加率が高いこともわかっているため、1日の目標量(上限)が設定されている。18歳以上の1日目標量は男性で750㎎未満、女性は600㎎未満。

(c)日経BP社 2011
![]() | 日経BP社 「サプリメント事典第4版」 JLogosID : 8526022 |