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勘える・考える
【かんがえる】


kangaeru

【古代】1)あれこれと思いめぐらす。2)覚悟する。3)発明する。4)期待する。5)判断するなど。[中国語]想、思索、希望、反省。think of, be ready, invent, expect, judge. など。

【語源解説】
古形、〈かむかふ(清音)〉。古語をみると、〈其国之神宝ヲ{てへんやねいちくちひと)(カム){てへんこう02)(カヘ)〔檢校〕/人民ヲ校(カムカ)ヘ(紀)〉などと、〈検・校〉をあてるように、〈かむかふ〉とは、比較、比校と向いあわせクラベテミルこと。本質はAとB、さらにC、D、E…とくらべあって思いめぐらすこと。したがって、カ(カレ、カク)向(ム)カフ→カムカフ→カンガフ→カンガヘルと成立(カムは音便でカン、それに引かれてカフ→ガフと濁音化した)。またカムカヘ→カウガヘ(m音の脱落)→コウガヘ(エ)とも転じた。一説に、漢字、〈勘(カン)(意味はかんがえること)〉を動詞化したとも。泳(およぐ)なども、泳の音jong(ヨング)と関連し、オヨグが成立したかもしれず、古代での漢字音とその日本語は検討すべきところであろうが、ここでは〈勘〉の説はとらない。なお漢字に〈考、按〉などをあてるが、古語には『万葉集』をはじめ、万葉仮字による明確なカムガフ、カンガフ、カウガフなどの例はみえない。また、漢字〈考(カウ)〉は孝と同じ。本来は〈攷(カウ)(かんがえる)〉の字を用うるべきでその代行として用いられ、そのまま通用させた。

【用例文】
○おろかなる罪にうちかうがへさせ給ふにや/宿曜のかしこき道の人にかんがへさせた給ふ(源氏)○{のぎもっともうえひ}〔{のぎもっともうえひ02}〕mini{カムカフ、カムガフ}/{てへんこう02}、{てへんやねいちくちひと}、挌、括、案、勘、験mini{カムガフ}(名義抄)○易(エキ)のつらの上手にてこの女のありさまを勘(カンガヘ)けるに(宇治拾)○百(はく)王(わう)まで日(にっ)本(ぽん)国(ごく)の御ぬしたるべしとぞかんがへ〔占ってみること〕申ける/きッと勘(かん)がへさせて〔占(うらない)させて〕勘(かん)状(じやう)をとッてまいれ(平家)○考(カンガウ)/之ヲ{てへんやねいちくちひと)(カンガウ)可シ(下学集)○勘(カンガユル)、校(同)、孝〔考(同)〕(運歩色葉集)○Cangayuru. カンガユル 思いめぐらす、また推算する/ウラカタ〔占形、占い〕カンガユル/ミライヲカンガユル〔占いで〕/カンガゥル(日葡辞書)○支考校(カンガヘ){レ}之、文章可(ひき)被(なほ)引(さる)直(べく)候/年(とし)比(ごろ)さだかならぬ名どころを考(かんがへ)置(おき)侍(はべ)ればとて一(ひと)日(ひ)案内す(芭蕉)○攷(カンガヘ)、考(同)、勘(同)、{てへんこう02)(同)(書言字考)○考(かんがへ)、勘(同)(早節用集)○まづ蕉翁の句を暗記し付三句のはこび、かうがへしるべし(蕪村)○下(ヘ)手(タ)ノ稽(カンガヘ)休(ヤス)ムニ似タリmini{棋、象棋ノ詞}(諺苑)○かむかへといふ言、かんがへとも、かうがへともいふは後の音便にて、もとはむを牟(ム)とたしかにいひ、下のかをも清(スミ)ていひし詞なるべし(中略)むかへはかれとこれとを比(アヒ)校(ムカ)へて思ひめぐらす意なるべき(本居宣長)○考へりや貧は世界の福の神(川柳)○童(どう)謡(えう)をさへ考(かんがへ)訂(たゞし)て論(あげつら)ふ歟と思ひの外/意(い)味(み)深(しん)長(ちやう)なるお考(かんが)へ(浮世床)○夫りやァ実に左(さ)様(う)さね。イヤ、併(しか)し考(かんが)へて見ると、多分(いけえこと)友(とも)達(だち)も無くなりやしたね(人情本)○尋思推(かんがへて)見(み)る忽ち髀(モヽ)を拊って曰く(成島柳北)○カンガヘル 考 ドウシテイイカカンガエテミナサイ、カンガエテモワカラヌ。同義語 オモウ、オモンパカル(ヘボン)○我(わ)れは……おもひも寄(よ)らぬ事を考へて人しれず泣きつ笑ひつ(樋口一葉)
【補説】
〈勘(かんがへる)〉の例が非常に多く、〈考(かんがへる)〉は近代語、しかも江戸期にはいって一般的となる。16世紀ぐらいまで占(うらな)いをカンガエルという限定された用法をみる。




東京書籍
「語源海」
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