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給べる・食べる
【たべる】


taberu

【古代】古形、〈たぶ〉。よく歯でかみ、腹中にのみこむ、食物をいただくこと。〈食(く)う{くう@くう(咋・喰)}〉よりいいことばと考えられている語。生活することにもいう。[中国語]吃、喝、生活。eat, drink, live.

【語源解説】
古語、タブ、タウブが近代語のタベルに変化する。その過程は給(タマフ)(賜)が基本。語として口(くち)や歯(は)とはまったく無関係。〈給(タブ)〉の変化した語がタベル。現代と異なって、固形物も液体(酒・水など)も区別なくタブ(タベル)と表現する。〈食物をもたべ物といふは、たま物〔賜はり物〕といふに同〉(倭訓栞)のとおり、飲も食も〈給わる〉の意でタブ(二段活用)と用い、のちタベル(一段活用)と語形変化(訛ってタブルとも)。口や歯を用いて食物をとることはクフ。したがって、古代でクフが〈たべる・かむ〉の両意をもった。逆にタベルは〈飯、酒〉など、固形物にも液体の場合にも用いた。

【用例文】
○酒を飲(タウ)べて太(タ)戸(ベ)酔うて(催馬楽)○ふたみのうらといふ所にとまりて、ゆふさり〔夕方〕のかれいひ〔乾飯〕たうべけるに(古今集)○これかれまどゐして酒たうべけるまへに梅の花に雪のふりかゝりけるを(後撰集)○御仏供のおろしたべむと申すを(枕)○〔子の日にあたり〕松をはしにてたべ物を出してはべりけるに(拾遺集)○糸哀レニ奉タリトテ喉乾クラム、此レ食(たべ)テヨ(今昔)○命生(い)くばかりの物を求(もと)べて給(た)べと申/仏の給はん物をたべて/御旅籠(はたご)馬(むま)などまいりたらんに物などたべて罷(まか)れ/大(だい)柑(かう)子(じ)をこれ喉(のど)かはくらんたべよ(古本説)○風すさまじける朝なれば……酒あたゝめてたべける(平家)○こゝで斎(とき)をたべぬと云うてたべずには居ませむ。寺へ戻ってたべませう(狂言)○宿に食べつけた薬が御座る。ちょっと喰べて参りませう/さて身共は寝酒を好いて食ぶるが、何と御坊にも一つ参らぬか/殊の外酒に喰(た)べ酔うて帰って御座る/たぶればたぶる程よい御酒で御座る(mini{和泉流}狂言)○Taburu. タブル 食うまたは飲む/タベヲク タベヲキマラシオウカhbox to1zw{?hss}=飲むのはわたくしでおしまいにしましょうか。すなわち、この盃(サカヅキ)はわたくしでおしまいにしましょうか/タベエイ(ヨイ)=酒に酔う(日葡辞書)○そうしてまつたけ〔松茸〕などもむざとたぶるはいらざる事ぢゃ(きのふは)○今日のつまり肴(さかな)に酢味噌で食(た)べる/御(お)食(めし)はまゐったかといはれて、いかにもたべましたといへば(西鶴)○頃日あべ茶にも給(たべ)あき申候/前{おどりじ01}より薬給(たべ)〔飲む〕候医師なども不替居申候(芭蕉)○給(たべる)mini{飯}/mini{たまふ}(早節用集)○いやいやお茶はたべますまい御むようになされ/新七めが食(た)べよごして(近松)○はらがへったと申て茶漬をたべて参ります(洒落本)○食べもせぬ馳走宿場に砂をもり(川柳)○朝(あさ)飯(めし)をたべねへうちは仕事をするにもぞくぞくいたします(浮世床)○朝は淡(あわ)粉(こ)一つばかりもたうべ〔食べ〕給ひしが/是〔飯(めし)〕をあの石地蔵のたべたらんには汝にもとらせん(一茶)○其身は一向給(たべ)不(もう)申(さず)(天保御触書)○夜食を多分(どんと)喰(たべ)たから腹は減(へら)なひ/ナニ母(おっ)様(かア)も私(わちき)も、酒は少しも給(たべ)〔飲〕ませんヨ/跡でお飯(まんま)に仕(し)なヨ、何もかもこっちへ出して置(おい)たから食(たべ)るばかりだヨ/何(ど)様(ん)なくらふしても……お飯(まんま)を給(たべ)なひ様なことがあってもはなれまひ/一所にお飯(まんま)でもたべよふmini{ト}いはれて/おめへもけんくわのだちん〔駄賃、饅頭〕をたべな(梅暦)○我等〔武家〕茶屋へ寄りて酒給(たべ)候事もなし(耳嚢)○如例、昼飯為給〔タベサセ〕(馬琴)○食mini{クラフ}○mini{タベル}Eat(イート)(華英通語)○三日にあげずたべないとなんだかからだのぐあひがわるいやうだ/時(じ)せつがらゆゑ食(たべ)店(もの)なぞもあきなひにくうございませう(安愚楽鍋)○横浜{さんずいき}船問屋の朝飯を喫(たべ)し(矢野竜渓)○タベル 食mini{〈俗語〉}メシヲタベル/タベカス 食滓/タベモノ 食物mini{〈俗語〉}/タベタガル/タベツケル(ヘボン)○お薩(さつ)〔さつまいも〕の蒸(むし)焼(やき)をして寝ながら食(た)べて(尾崎紅葉)○けさ御(ご)膳(ぜん)を食べてゐる主人/午(ひる)もこっちで食べて行けば好(い)い(森鴎外)
【補説】
幕末までタベルに、〈給〉をあてるのはごく一般的であり、正当。〈食〉はむしろ明治以降、国語教育により一般化。⇒〈くう〉〈くらう〉




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537769