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懇・念比
【ねんごろ】


nengoro

【古代】心のこもっていること、また友人、恋人同士のごく親しいこと。古語はネモコロ。[中国語]懇切。intimacy.

【語源解説】
『万葉集』に〈蛙(かはづ)なく六(むつ)田(た)の河の川(かは)楊(やぎ)の根(ネ)毛(モ)居(コ)侶(ロ)見れどあかぬ河かも〉とうたわれているように、古語はネモコロ。ネモコロnemokoroがネムコロnemukoro→ネンゴロnengoroと母音交替・子音交替で現代語となる。さらに、ネモコロはネ(根)+モコロと分けて考えられる。モコロは古語で、〈~のようだ〉の意をもつ。したがってネモコロは根が地に深くしっかりと張っているようだ、心が細やかに張りめぐらされている意。そこにネンゴロの原義がある。江戸期には〈男色〉に関連して用いる特別な語。

【用例文】
○菅の根の懃(ねもころ)見まくほしき〔逢いたい〕君かも(万)○因果ヲ信ジ慇懃〈懃mini{袮(ネ)母(モ)呂(コロ)尓(ニ)}〉誦持シ、昼夜息(やすま)ず(霊異記)○心かはしてねんごろなれば(源氏)○慇mini{ネムコロ、ネモコロ}(名義抄)○人あひ〔つきあい〕心ざまゆうに情ありければ、倉光もねんごろにもてなしけり(平家)○重ねて〔繰り返し〕ねんごろに修せむ事を期(ご)す(徒然草)○Nengoroni. ネンゴロニ 愛情をこめて、親切に、また細密に、また正確に(日葡辞書)○慇懃(ネンゴロ)(易節用集)○権右衛門方に而念比(ねんごろ)のもの共寄合戴申候(芭蕉)○我若年の時衆(しゅ)道(だう)の念比〔情交〕せし人(西鶴)○ねんごろがひに〔平生懇意なので〕(近松)○懇(ねんごろ)(早節用集)○通小慇懃mini{ネンゴロブリスル}(中夏俗語藪)○湯屋へ来て念比(ねんごろ)ぶりは側へぬぎ(川柳)○ネンゴロ ネンゴロナ人、ネンゴロニ客ヲモテナス(ヘボン)○才略もあり温厚(ねんごろ)でもあり(嵯峨の屋お室)○浪曲家の細君と懇ろになってしまった(井上友一郎)
【補説】
江戸期は〈念比(ねんごろ)〉がよくみられる。〈念入り〉などの念に通じるからでもあろう。gojutit{の}




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537938