終日・尽日
【ひねもす】

hinemosu
【古代】一日中の意。〈ひめもす・ひめむす・ひめもそ・ひねもそ〉ともみえる。〈夜もすがら{よもすがら@夜もすがら}〉の対。[中国語]終日、整天。all day.
【語源解説】
正式には〈ひねもすがら{ひねもすがら}〉で、その省略。ヒネhineは母音交替で、ヒノhino、ヒネhine, 日の(ね)、モは〈夜〉を想定して、夜モ昼モの気持ち。スはスガラの省略。〈家へ返る道スガラ〉などのスガラ→スとなった。スガラは古語にも、〈大夜スガラ〉(古語拾遺)、〈さ夜スガラ〉(日本書紀)などとみえ、連続して時が経過するさまを示す。したがって、ヒネモスガラは太陽(日)のずっと照り輝いている間(一日中)の意。ヒメムス・ヒメモスとも訛る。のちにスガラ{スガラ}は時間的のみでなく空間的にも用いらるようになった(道スガラなど)。過ギルも同根語。なお、古語では〈ヒネモスニ〉と多く助詞のニをとって用いた。
【用例文】
○比(ヒ)袮(ネ)毛(モ)須(ス)に見とも飽(あ)くべき浦にあらなくに(万)○別るべき事もあるものをひねもすにまつとてさへも嘆きつる哉(大和物語)○ひねもすにながめくらして(源氏)○盡日(ひねもす)雲ヲ望メバ心繋(つなが)レズ(和漢朗詠集)○Fimemusu. ヒメムス/Fimemosu. ヒメモス 終日(日葡辞書)○盡日(ヒネモス)、終日(同)(易節用集)○終日(ひめもす)骨折てもゆふべとくとねぶればぞ(醒睡笑)○関こゆる日は終日(ひねもす)雨ふりて(芭蕉)○終日(ヒネモソ)mini{盡日ヲ云フ}(書言字考)○春の海ひねもすのたりのたりかな(蕪村)○終日(ひねもそ)(いろは節用)○ヒネモス 終日 ヒメモスと同じ(ヘボン)○昼は終日(ひねもす)夜は終夜(よもすがら)(二葉亭四迷)○ひねもす{ひのめ(日目)すがら(盡)ノ義}終日=盡日(日本大辞書)
【補説】
ヒメモスは単に母音交替ではなく、〈日ノ目ヲミル〉の日ノ目などからの類推心理もはたらいたか。

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8538000 |