渡りに舟
【わたりにふね】

watari ni hune
【近代】〈渡りの舟〉とも。ちょうどよいタイミングでことがはこぶこと。期待し、まち望んでいるとき、都合のいい時機がおとずれること。a boat on the shore of a river that is otherwise uncrossable.
【語源解説】
『法華経』〈薬王品〉に、〈渡リニ船ヲ得タルガ如ク、病ニ医ヲ得タルガ如ク、暗ニ灯ヲ得タルガ如シ〉とみえる。仏典から出た譬喩表現。
【用例文】
○〔日蓮は〕わたりに船の如く渇して水のごとく、うえて飯の如く思て候(日蓮)○我も旅人にあらざれば、渡の舟とも成さばこそ/こは渡りに船を得たりとや(謡曲)○妾の遣りどころ案じけるに、この女渡りに舟、中津川の親里に帰りぬ(西鶴)○エヽ無用の抜駈け殊に舟迄仰付けられた、渡りに船とは此事(近松)○吉原のさんや堤(つつみ)の土手ならば渡に舟と打うなづき(平賀源内)○わたりに舟とは此事と岸よりひらり(洒落本)○渡(ワタリ)ニ船(フネ)(諺苑)○お栄〔人名〕には実にこれは渡りに船の話だった(志賀直哉)
【補説】
現代でもよく用いられる。日蓮から志賀直哉まで約八百年も日本人の愛句。

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8538266 |