東郷村[東北地方] 角川日本地名大辞典

(近代)明治22年〜昭和30年の西田川郡の自治体名。庄内地方，庄内平野の南部，赤川左岸，大山川右岸にあたり，両川にはさまれた南北に長い平坦地に位置する。青山・神花・猪子・成田新田・東沼・善阿弥・角田二口の７か村が合併して成立。大字は旧村名を継承。役場は大字青山に設置されたが，南端に片寄っていたため，北部集落の要求によって昭和４年，大字神花に移転。村名は，大山川をはさんで対岸を近世から西郷と称したのに対し東郷を称する。戸数・人口は，合併時の明治22年438・3,114，同42年455・3,384。世帯・人口は，大正９年488・3,217，昭和10年518・3,488，同25年565・3,743。稲作農業地域で，大正４年の戸数473，うち農業344，作付反別821反余，うち水田671反余。農業用水は青竜寺川の末流の青山堰・善阿弥堰を利用。最末流の北部は用水不足であったが，大正14年の猪子揚水機がそれを解消。大字角田二口の門前揚水機は昭和４年完成。乾田馬耕の導入は明治28年であったが，その普及は遅れ，村全部の乾田化は明治32年に完成。赤川・大山川に接する原野を利用して桑を栽培。大正４年の養蚕農家数102。昭和６年には「養蚕業は本村に於ける最も重要なる副業にして成田新田最も多し」とあり，全村の養蚕農家戸数230（郷土調査）。昭和９年の養蚕農家戸数282。明治44年東郷生産販売組合が成立し，青山製糸工場設立，女工数75。大正３年同組合解散。製糸工場は，同６年合資会社青山製糸工場として復活し，女工50・釜数50（三川町史）。大字青山・神花・猪子・成田新田を結ぶ東郷街道，大字神花・東沼・善阿弥・角田二口を結ぶ湯野浜街道，大字角田二口・善阿弥・東沼を結ぶ西郷街道があり，大正11年赤川対岸の押切村大字押切新田と結ぶ両田川橋が竣工。昭和５年バスが運行され鶴岡市と結ばれた。大正３年大字青山・天神堂・猪子・成田新田に電灯敷設。大正５年に大字角田二口・善阿弥・東沼・尾花に電灯敷設。電話は押切局取扱区域は昭和４年，栄局取扱区域は昭和６年導入。当村の耕地整理は大正初期に計画されたが実施されず，第２次大戦後の昭和26年青竜寺川土地改良区の手で水利事業とともに耕地整理も含めて土地改良事業がすすめられ，昭和31年に竣工した。赤川・大山川にはさまれた当村はしばしば洪水の被害をうけ，明治12年の冠水田畑面積430町９反余，浸水家屋157。この時「貧民ハ家屋ヲ失ヒ，已ニ糊口ヲ支ヘ，家族多ナル者ハ他村ニ出稼シ漸々飢ヲ凌キ居ル体，実ニ黙止カタ」き惨状であった（上申書）。おもな洪水による冠水田畑面積は，大正10年567町余，昭和２年200町余，明治27年の大地震では全壊23戸，田畑各地に亀裂を生じ，余震のため村人は10日間屋外で過ごした。明治27年の大地震の被害を一つの契機に，大字神花に東郷尋常小学校が設立され，一村一学区が完成。昭和30年，横山・押切の２か村と合併して三川村となる。各大字は同村の大字として存続。